【インタビュー 吉岡里帆さん】人と、言葉に誠実に向き合いたい  『UR LIFESTYLE COLLEGE』のナビゲーターとして7年

編集広報部
【インタビュー 吉岡里帆さん】人と、言葉に誠実に向き合いたい  『UR LIFESTYLE COLLEGE』のナビゲーターとして7年

毎週日曜日の夕方、J-WAVEをキーステーションにJAPAN FM LEAGUE(JFL)5局でオンエア中の『UR LIFESTYLE COLLEGE』(18・00―18・54)。2016年のスタートからナビゲーターを務めるのが俳優の吉岡里帆さん。

「GOOD LIVING」をキーワードに、毎回一人のゲストから近況や足跡、最もパーソナルな部分でもある家の中の様子を吉岡さんが聞き出していく。ゲストは俳優としての先輩や仲間、ミュージシャン、小説家や詩人、アーティスト、漫画家などサブカル関係と幅広く多彩だ。今後ブレイクが期待できる若手への目配りも、この番組ならでは。これまでに登場したのは380人に及ぶ。

映画、テレビドラマ、舞台、教養番組、CMと多方面で活躍する吉岡さん自身が「かけがえのない宝物」「ライフワーク」と位置づける、この番組への想いやラジオの魅力について話を聞いた。


――『UR LIFESTYLE COLLEGE』も早いもので7年ですね
まさか、こんなに長く続くとは......お話をいただいたとき、「なぜ私に?」と思いました。ラジオって、自分の話をずっとするってイメージがあって、私は自分語りがそれほど得意なほうではなかったので。でも、おしゃべりのプロでもあるDJ TAROさんが一緒だから安心してくださ
いって言われて、思いきって挑戦することにしたんです。けど、1年で独り立ちすることになって......。その初回は緊張のあまり、本当に震えてしまったんです。ゲストとしてお招きした夏木マリさんに「吉岡さんが思うように、自由にやっていいから」と言っていただいたことが、とても心に残っています。

7年続けていても、いまだに収録日はものすごく緊張するんです。本番は、事前に仕込んだ知識を織り交ぜながら話していくのですが、何よりも実際にお会いしたゲストの皆さんがそれぞれにとても魅力的で。スタジオにいらした瞬間に感じるその方の内面や空気感、波長みたいなものを、どうしたら音に乗せられるのかな? そればかり考えていて、一瞬たりとも気が抜けません。

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――ゲストの魅力を引き出すために、どんな工夫を?
他の番組で今まで語ったことのない話をできたらお聞きしたいなと思っています。お会いした瞬間、特に初対面の場合、まずはしっかりと対話をして、心が通じ合う瞬間みたいなものを見つけられれば。それが、この番組を長く続けさせていただいている理由でもあるんじゃないかな、と。淡々と聞くだけでは、"どこかで聞いたような人物像"になってしまいそうで、そのあんばいが難しいなっていつも思っています。

最近、なんだか台本が短くなってしまったんですよ。「質問はもうちょっと短めに」ってスタッフさんのメッセージなのかなあ(笑)。いざ自分がインタビュアーの立場になってみると、ちゃんとお話しして、相手の心が動く瞬間とか、大事にされている部分が伝わったら、その方のことを好きになる人がもっと増えるだろう――そんな予感しかなくて、いつも粘っちゃう。確かに、自分がゲストとして出る立場なら、完璧な台本だとすごく安心感があるし、質問への回答も事前に考えておけるので演者側としてはありがたいんですけどね。

――思わぬところから話が転がっていく丁々発止のアドリブ感、ライブ感が心地いいですね
ゲストのファンの方が「この話初めて聞いたな」って思ってくだされば、「やった!」っていう感じ(笑)。だから、話を途中で切るのがしんどいんです。流れの中で本当にポロっと話してくださることとかが、実はすごく面白かったりするので、いつも悩みます。

ゲストの方から「実はこんな話をしたかったんです」みたいなのが、ふわっと出てくる瞬間が、毎回必ずあるんです。番組の構成上、家の中の様子をお聞きしていることも大きいのかもしれません。パーソナルな部分にお邪魔させてもらっているというのか、人となりのようなものに触れられる瞬間もまた、この番組の面白いところではないでしょうか。

だからといって、あまりに踏み込み過ぎるのは避けるように意識しています。相手に嫌な思いをさせないというのは絶対条件。気持ちよく、楽しく過ごせる、そして、その方の隠れていて、まだ世に出ていない良いところを引き出せればいいな、と。

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――ラジオの魅力ってどんなところでしょう?
とても個人的なものとして楽しめるところではないでしょうか。みんなが見ている映画やドラマって、「見ておかなきゃ」って感じる瞬間があると思うんです。今流行っているものが分かったり、時代を投影していて、多くの人とそれを共通体験するような側面があるのかなって。一方でラジオってもっと個人的で、「何か心地いいな」「すごく面白いな」とか、一人ひとりのツボな部分だけでつながっている感じがするんです。もしかすると、それは少数派なのかもしれませんが、とてもコアなファンの方とつながることができているという実感があります。そこがラジオの最大の魅力かなと思います。

『UR LIFESTYLE COLLEGE』も、長いこと聴いてくださっている方々がいるんだという手応えを感じます。それはこの番組が、その人の内面とか生活習慣にフィットできたからなのかなと思うんです。それが、私にとってのラジオの面白さですね。

『UR LIFESTYLE COLLEGE』は1カ月に1回、JFL系列局のナビゲーターからリポートやコメントをいただくコーナーがあります。皆さん、発声の仕方からその土地の色が出るというか、すごく好きで。お薦めしてくださるスポットとかも、街の雰囲気が伝わってきて聴いていていつもワクワクしています。私は関西出身なのでFM802が耳に残っているのですが、地元にいたころガソリンスタンドに行くと流れていたのを思い出します。地元のラジオって、カフェや喫茶店でもよく流れていたので、こんなふうに東京でたまに耳にしても、当時の情景がぱっと思い出せる。自分の番組も、いつかそんなふうに懐かしいなって思ってもらえるように、誰かの生活に根づいていたらいいな。

――BS-TBS『奈良ふしぎ旅図鑑』(水、20・54―21・00)や、最近はNHK『Dearにっぽん』(総合は日、8・25―8・50/BSでも再放送あり)など紀行ものやドキュメンタリーのナレーションにもお仕事の幅を広げていますね
ふだんはメイクとスタイリングをしていただいて、表に出る仕事をしていますが、俳優業ってそもそも、何かに共鳴して体現することなのかなって思うんです。そういう意味で、ナレーションというお仕事は、自分が表に立つわけではありませんが、「これを伝えたい」と思って取材して台本を書いた方の気持ちを酌んで、世に送り出す役目があると思っていて。例えば、この人のこんなところが素晴らしいとか、この人のこのストーリーが本当に素敵なので聞いてください――そんな制作陣の思いを大切に、スタッフの一員として声入れをしています。

――音だけのラジオやナレーションで意識していることは?
ラジオの場合、ゲストの方が来てくださって、楽しくなって、うわっとテンションが上がっちゃうようなこともあるんですけど......(笑)。日曜日の夕方って、明日からまた仕事が始まってしまうという、ちょっと憂鬱な時間帯でもあるので、癒やしのひとときになるように、落ち着いたトーンを心がけています。

それと、言葉の選び方でしょうか。自分が外で仕事をするとき、言葉の「力」と「危うさ」の両面を感じることが少なくありません。特にネット社会になってから、フェイクニュースしかり、"切り取り"しかり......自分の思いがけない場所に届いていくものでもあることを忘れてはいけない。誤解を招かないよう、できるだけ多くの人の耳に届くような誠実さを持って話すように心がけています。聴いた人が嫌な気持ちにならないようにということだけは、とても気にしています。もちろん、すべての人になんてできっこない。でも、そのことにいつも想像を働かせることが大切なのかな、と。

――最後に、吉岡さんが快適に暮らすために心がけていることは?
人を好きでいることです。

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(2023年7月4日、J-WAVEにて/取材・構成=「民放online」編集担当・西野輝彦
/撮影=園 了佑/ヘアメイク=百合佐和子〔資生堂〕/スタイリング=ちばひろみ)


吉岡里帆(よしおか・りほ)
1993年1月15日、京都府出身。NHKの連続テレビ小説『あさが来た』(2015年)で注目を集める。23年、主演映画『ハケンアニメ!』で第46回日本アカデミー賞優秀主演女優賞を受賞。主な出演作に『カルテット』(TBSテレビ、17年)、『健康で文化的な最低限度の生活』(関西テレビ・フジテレビ、18年)、『レンアイ漫画家』(フジテレビ、21年)、『華麗なる一族』(WOWOW、21年)、『しずかちゃんとパパ』(NHK BS、22年 ※23年7月25日から総合・BS4Kで再編集版を放送中)、映画『島守の塔』(22年)など。映画『アイスクリームフィーバー』が7月14日から公開中、9月10日からはWOWOWの連続ドラマW『落日』の放送を控える。

『UR LIFESTYLE COLLEGE』は21年に『LIFESTYLE COLLEGE 吉岡里帆と日曜日18時。』としてリットーミュージックから書籍化された。

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