慶応大 X Dignity センター AI時代の報道機関のあり方を提言 「民主主義の守り手」としての機能強化・信頼構築を

編集広報部
慶応大 X Dignity センター AI時代の報道機関のあり方を提言 「民主主義の守り手」としての機能強化・信頼構築を

慶應義塾大学 X(クロス)Dignity センターは1月26日、都内で記者発表会を開き「AI時代の報道機関のあり方に関する提言」を公表した。

AIやアルゴリズムを基盤とする情報流通の拡大や生成AIの普及により、刺激的な偽・誤情報、「もっともらしい情報」の流通が進むなど、情報空間の変質が「事実に基づく理性的なコミュニケーションを前提とする民主主義を危うくする」との問題意識から、「取材・検証に基づき、専門的な倫理基準に基づいて情報を提供する報道機関の役割が極めて重要」などと指摘。民主主義の根幹となる衆議院選挙の公示日を前に提言した。「AI時代の報道機関のあり方に関する提言」(全文)はこちら(外部サイトに遷移します)。

慶應義塾大学 X Dignity センターは、21世紀における「尊厳(dignity)」の再定義を目指し、新たな領域横断研究の拠点として2024 年に設立された。本提言は、X Dignity センターに設置された「情報空間の健全化に関する有識者会議」で検討された成果となる。同センターが提言を公表するのは今回が初めて。

記者発表会には、同センター共同代表の山本龍彦氏(慶應義塾大学大学院法務研究科教授、=冒頭写真㊥)と、X Dignity センター兼担所員の水谷瑛嗣郎氏(慶應義塾大学メディア・コミュニケーション研究所准教授、=冒頭写真㊨)、情報空間の健全化に関する有識者会議構成員の鈴木秀美氏(国士館大学法学部特任教授/静岡大学理事/大阪大学名誉教授/慶應義塾大学名誉教授、=冒頭写真㊧)が登壇。

はじめに、山本氏が提言の前文について説明。「AIがわれわれの日常に浸透しつつある」ことを前提に、「報道機関が民主主義の守り手であり続けるには、一部のデジタル・プラットフォームやアルゴリズムの監視、AI利用に関するガバナンスや自己規律などが必要になる」と述べ、報道機関自身がこれらを提言することの難しさを挙げ「第三者である大学機関が提言することに一定の意義がある」と提言の趣旨を話した。

提言には、「透明性および説明責任の一層の確保」「AI時代における報道機関の監視対象の再検討」「選挙時・災害時など、公共性が特に求められる特定期間における機能強化」などの7項目があり、情報が氾濫するなかで報道機関の情報を人々に選択・受容してもらうため、取材過程や編集等の報道のプロセスをこれまで以上に透明化し、必要に応じて社会に説明するべきと指摘。報道機関の公共的基盤を確かなものとするために、「取材や編集といったジャーナリズムに固有のプロセスを経ていない発信者からの情報との差別化」を図る重要性を説く。

また、一部のデジタル・プラットフォームは、AI等の設計や実装を通じて、民主的な手続によらずに公共的意思決定を大きく左右する力をもちうるとし、「国家権力にも匹敵しうる『新たな権力』として、国家権力とともに監視の対象とすべき」と訴えている。

このほか、選挙時・災害時など公共性が特に求められる特定期間においては、事実かどうかについて疑いがあり、かつ一定の影響力を有する情報に対して必要な検証を行い、積極的に訂正または補足を求めている。選挙時は、有権者に選挙における本質的な争点の提示、公正性に基づいた報道に努め質的公平性の確保、災害時は必要に応じてファクトチェック機能を果たすこと、などを求めた。

水谷氏は提言した意義として、報道機関各社に▶アテンションエコノミーに対して適切な距離をとる、▶信頼性を確保するために透明性を確保する、▶AIの活用に関する指針を示す、▶監視対象として、デジタル・プラットフォームや情報技術の発展にも目配りをする、ことを求めた点を挙げた。

鈴木氏は、「今回の提言は、報道機関にとって目新しいものではないかもしれない。しかし、メディアに対する不信が広まっている今の情報空間で、報道機関自身がその役割を訴えても、素直に耳を貸してくれない人もいるのではないか」と話し、「アカデミズムからの提言によって、世間・社会に対して、あらためて報道機関の果たしている、果たすべき役割を強くアピールしたい」とコメントした。

最新記事