福井テレビジョン放送(福井テレビ)は、地元住民・企業が1,000人規模で参加する「スポーツフェス」を2018年から開催している。2025年は9月14日に「9.98スタジアム(福井県営陸上競技場)」で開催し、1チーム8人以上の80チームが競技に参加した。
同事業は、運営、セールス、制作・技術など、福井テレビ全社が一丸となって取り組む。スペシャルゲストやステージライブによる集客とはひと味違う、地元放送局による地元住民・企業が主役の地域密着型イベントだ。このたび、「スポーツフェス」を立ち上げた福井テレビ・コンテンツ事業局長の辰川昇氏と、運営を担うコンテンツ事業部長の山元呂室氏に、イベントの事業化に成功した背景やその裏側、今後の展望を伺った。
<コンテンツ事業部長の山元呂室氏㊧とコンテンツ事業局長の辰川昇氏㊨>
テレビ局主催ならでは
本格的なスポーツイベントへ乗り出す
福井県は「全47都道府県幸福度ランキング(一般財団法人日本総合研究所)」において12年連続で1位を獲得。平均寿命の都道府県ランキングでも上位を維持し、全国小中学校の体力テストでもトップクラスの成績をおさめている。これらは、家族・地域コミュニティのつながりの濃さや、日ごろから各コミュニティが健康増進に関心を持っている結果だといわれている。
そこで福井テレビでは、老若男女が楽しく柔軟に健康増進を図る場を提供するべく「スポーツフェス」を開催。企業・団体向けにチーム対抗での大綱引き、4,000mリレーなどの競技を行うほか、子ども向けの駅伝・陸上教室、障がい者スポーツデモンストレーションも実施している。
大会のもようは、福井テレビの技術チームによって会場の大型ビジョンに投影される。アナウンサーの実況やプロの演出も加わり、大人も熱中するテレビ局主催ならではの本格的なスポーツイベントとなっている。
<大型ビジョンと技術スタッフ>
辰川氏は、「スポーツフェスのきっかけは、当社が主催していた『FUKUIスーパーレディス駅伝』の見直し」と話す。駅伝大会の開催に伴う交通規制の厳格化などから、福井テレビは1985年から続く「FUKUIスーパーレディス駅伝(旧:北陸女子駅伝)」を2017年で終了した。メイン事業の一つでもあった全国規模の大会終了に社内で戸惑いの声もあった中、2018年から新たに「スポーツフェス」へと乗りだした。「プロの選手に限るのではなく、地域の方が一堂に会せる"地元参加型"の機会をつくりたい」と企画当時の思いを語る辰川氏。この思いが、長年の駅伝事業で縁のあった企業や団体、行政の賛同を得て、現在まで多くの後援・協賛を獲得している。
「スポーツフェス」では、競技のほかに地元企業や団体によるブース展開を行っている。人材募集のための企業PRコーナーや、飲食店がつどった「福丼県フェス」、地元大学による運動能力測定コーナーなど、例年さまざまな協賛企業・団体が会場を盛り上げている。飲食スペースも設けられており、家族や友人、職場の仲間との憩いの場も用意している。

<参加した企業の旗やブース展開のようす>
大人から子どもまで
楽しむ参加者の声
大人たちも真剣に競技に取り組んで本気で楽しむからこそ、参加した企業は「社員のレクリエーションになった」「コロナで希薄になったコミュニケーションが増えた」と親睦を深めているという。また、「企業のPRにもなった」というメリットも挙げられた。山元氏は「大綱引きでは、初対面のおじさん同士が喜びのあまり抱き合うことも」と当日の白熱するようすを語る。
<大人も真剣な大綱引き>
スポーツフェスと同時開催している「わんぱく駅伝・中学駅伝」は、福井県内の学校または各種クラブチーム単位で参加できる駅伝大会だ。選手がたくさんの応援に囲まれタスキをつなぐ姿は、かつての「FUKUIスーパーレディス駅伝」を彷彿とさせる。対象年齢を引き下げ2025年に新設した「こどもかけっこチャレンジ」は、家族での参加者から好評で、競技に挑む園児の保護者も大勢集まり、わが子の勇姿を見届けている。
福井テレビがおくる地域貢献の形
福井テレビは「スポーツフェス」以外にも、"筋肉体操"でおなじみの谷本道哉さんが自宅でできるワンポイントフィットネスを紹介する番組『谷本道哉とからだスマイル健康アクション‼』や「福井テレビ ゴルフスクール」の運営など、"運動"を起点にした健康増進への取り組みに力を入れている。「これらの取り組みも地域貢献のひとつ」と辰川氏。「横のつながりが希薄になっているいまだからこそ、『スポーツフェス』で幅広い世代が交流し、楽しく健康増進を図れたら。参加者をさらに増やして地域の活性化に貢献したい」と意気込みを語った。
