NHKは1月8日、2025年度の予算・事業計画を村上誠一郎総務大臣に提出した。事業収入は前年度比0.2%増の6,034億円、事業支出は2.4%減の6,434億円。事業収支差金は、400億円のマイナスで3年連続の赤字予算となり、還元目的積立金で補てんする。
■NHK収支予算・事業計画・資金計画(外部サイトに遷移します)
https://www.nhk.or.jp/info/pr/yosan/
予算の主な費目(=冒頭表)は次のとおり。総合テレビ、Eテレ、ラジオ放送の全国放送番組費は、前年度から3%(28億円)減の893.5億円、衛星放送の全国放送番組費も4.2%(23.2億円)減の528.9億円となった。一方、2025年10月から開始する必要的配信業務を含むインターネットサービス関連費のうち、配信などの基本サービスに関しては、2025年度は前年度と同規模の180億円で実施するとした。これに加え、ウェブアプリ開発および認証の整備などを必須業務化に必要なイニシャルコストとして29億円を計上したことで、合計すると従来の実施基準の上限である年200億円を超える209億円となった。1月8日に開催された記者会見で、稲葉延雄NHK会長は、従来のインターネット活用業務の経費と単純に比較することは難しいとしたうえで、「イニシャルコストを除けば、大体2024年度と同じ規模の予算になっている。引き続きこのようなかたちで予算の額は推移するのではないか」と説明した。
還元目的積立金からは、赤字を補てんするほか、NHKと民放の二元体制維持に向けて、効率的な放送ネットワーク維持の共同利用型モデル導入を進めるため(株)日本ブロードキャストネットワークに、2024年度の11億円に加え、28億円追加出資する。2025年度末に見込む残高660億円のうち、561億円は共同利用型モデル導入に向けた取り組みの費用のみに使用する想定である。
また、有料インターネット活用業務勘定として、放送番組等有料配信収入を前年度から5.8%(3億円)増の59億円と見込んだ。同業務は、NHKオンデマンドおよびVOD事業者への番組等を有料で提供するもの。
NHK経営委 経営計画の修正を議決 必須業務となるネット配信等への対応盛り込む
NHK経営委員会(古賀信行委員長)は1月8日、2024年10月9日~11月7日までの意見公募手続きを実施したうえで、NHK経営計画(2024-2026年度)の修正を議決した。これを受けNHKは、同経営計画の修正を公表した。
■NHK経営計画(外部サイトに遷移します)
https://www.nhk.or.jp/info/pr/plan/
今回の修正は、改正放送法(2024年5月24日公布)で必須業務化されたインターネット配信が2025年10月から始まることを受けたもの。経営計画では、①放送番組の同時配信、②放送番組の見逃し・聴き逃し配信、③番組関連情報――の3つを必須業務として配信するとしている。受信料については、テレビを設置せず、インターネット配信のみを利用する場合は、地上契約(月額税込み1,100円)として取り扱うとした。すでにNHKと契約を結んでいる場合は追加負担なく、インターネット配信を利用できる。
このほか、▽2024年8月にNHKラジオ国際放送等で国際番組基準に抵触する事案があった(「NHKラジオ国際放送問題への対応について」、外部サイトに遷移します)を受けた国際発信のリスク管理向上、▽情報空間全体の多元性確保への貢献として放送ネットワーク維持に積極的に対応していく、▽2026年3月末に停波するNHKラジオ第2の教育番組はNHK-FMで原則放送する――ことなども追加された。
また、「新たな営業アプローチ」の推進による受信料収入の改善などから、3か年収支見通しのうち、2025・26年度の事業収入および支出にそれぞれ100億円を加算した。これに伴い、当初の経営計画では6,000億円を下回る事業収入だったが、6,000億円規模となり、価格転嫁やインフレ等に適切に対応したいとした。
民放連は2024年11月5日、経営計画修正案に対する意見を提出し、「放送ネットワークインフラの効率化に向けた取り組みを(中略)具体的に予算・事業計画に盛り込むこと」「(インターネットサービスについて)実際のサービスが開始された後に、あらためてメディアの多元性の確保、公正競争の確保を確認すること」などを求めていた。民放連意見の全文はこちらから。