民放連は7月12日、「デジタル時代における放送の将来像と制度の在り方に関する取りまとめ(案)」に対する意見を総務省に提出した。
「デジタル時代における放送制度の在り方に関する検討会」(三友仁志座長)では、放送が今後果たすべき役割を考察。検討結果を同「取りまとめ(案)」として示し、放送ネットワークインフラに係るコスト負担の軽減や、多様な伝送手段を確保し、良質な放送コンテンツを届ける社会的役割の持続的な維持・発展を目指すことなどを提言していた。
民放連は同検討会の2度のヒアリング(2021年12月6日の第2回会合、22年6月10日の第11回会合)で考え方を示しており、今回の意見はその内容も踏まえた。
経営の選択肢を増やす方向の制度整備には賛成した。また、放送が果たしてきた役割について、「地域に根ざしたローカル局の役割や重要性は高く評価されるべき」旨を加筆すべきと提案した。
「共同利用型モデル」については、目的はコストの圧縮であり、「ハード会社はそのための一つの例示と捉えている」と表明。総務省も適切に関与しつつ関係者間で具体的な検討・協議を進めることは適切とした。
インターネット配信で国が放送コンテンツの流通に対する政策や関与を強めれば、過度な規制につながりかねないとの懸念を示し、民放各社の活動や「表現の自由」に十分な配慮を要望。民放事業者のインターネット配信は、それぞれの経営判断で行うもので、基幹放送に準じた公共的な取り組みを行う場合も「法制度上の規律を行うことは不適切」との考えを示した。
独占的な受信料財源で運営されるNHKのインターネット事業は、市場競争を歪めるリスクをはらんでいると指摘。仮に「放送の補完」という位置づけの見直しを含めて検討する場合、現行の受信料制度との関係を整理し、視聴者・国民の十分な理解を得ることが不可欠とした。
総務省は意見募集の結果を踏まえ、次回7月29日の検討会で「取りまとめ」の内容を確定させる。
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日本新聞協会のメディア開発委員会は19日、同取りまとめに対する意見を公表した。インターネット上の言論空間は放送事業者だけでなく新聞・通信社など多様な主体によって構成されており、放送制度の原則である二元体制を持ち出すことは妥当ではないと指摘。さらに、NHKのインターネット業務が際限なく拡大することを強く危惧するとともに、検討会に表現・言論の自由や他の事業者との競争の公平性の視点を含めた精緻な議論を要望。また、NHKのネット業務は「放送の補完」であり、理解増進情報のあり方について抑制する方向で見直すべきとした。