【韓国ラジオ最新動向②】地方ラジオ局を支えるための政府支援策/ラジオはリスナー参加型番組作りを重視

趙 章恩
【韓国ラジオ最新動向②】地方ラジオ局を支えるための政府支援策/ラジオはリスナー参加型番組作りを重視

AM停波も広告費減は阻止

前回は、韓国のラジオ放送局が90年代後半から早期にインターネットラジオサービスを始め、見えるラジオ、YouTubeチャンネル運営、独自のアプリによるインタラクティブサービスなど、さまざまなビジネス戦略に挑んできたことを紹介した。

OTT時代を迎えさまざまなチャレンジを重ねている韓国ラジオ放送局。それでもラジオは、リスナーも広告収入も減る一方である。特に最近は韓国ではテレビも見ない、スマートフォン経由でNetflixYouTubeしか見ないという若い世代が増え続けている。

放送メディア通信委員会の「2025年放送通信広告費調査」によると、テレビ広告市場規模は2022年1兆3,762億ウォンから2024年1兆364億ウォンに減少、2025年は8,874億ウォンまで減少する見込みである。ラジオ広告市場規模は2022年2,540億ウォンから2024年1,939億ウォンに減少、2025年は1,604億ウォンになると予測されている。ラジオ広告は減少してはいるものの、テレビ広告に比べると減少幅は少ない。韓国のラジオは202211月、地上波放送局のラジオがAMラジオの運営を休止した。リスナー減少、施設の老朽化、維持補修費の負担を理由にAMを停波し、FMのみ放送している。AMラジオがなくなったということは広告を流せる場がなくなったという意味でもあるが、FMラジオのみで広告収入の急減を食い止めた。

ちなみに、韓国では公共放送のKBSのみ北朝鮮まで放送が届くようにAMラジオの運営を維持している。AMラジオといえば警報や災害放送の印象が強い。韓国では毎年8月中旬になると、民防衛(ミンバンウィ)訓練といって全国民を対象に20分間空襲避難訓練が行われる。民防衛訓練は2000年代ぐらいまで毎月1回行っていたが、今は年に一度である。AMラジオから一斉に警報と非難訓練の案内放送が流れ、外を歩く人たちは近くのビルの中に避難し、車もその場でストップ、走行を停止しないといけない。ソウルの夏というと、微妙にノイズが混ざったAMラジオの民防衛訓練放送のアナウンスを思い出す。

政府はキー局と地方局の広告セット販売制度を導入

韓国ラジオ局の広告収入が急減していないもう一つの理由としては、韓国政府による支援制度がある。韓国政府はラジオを災害時に役立つ社会の重要なインフラととらえ、地方ラジオ局を助けるために2012年よりキー局(KBSMBCSBS)のラジオ広告と地方中小ラジオ局の広告をセットでしか販売できないようにした。地方中小ラジオ局にはキー局の地方ネットワーク(地域民放)も含まれる。広告主は首都圏の大手ラジオチャンネルに広告を出したい場合、同じ広告を地方のラジオにも広告費を払って流さなければならない。韓国のように全人口の半分が首都圏に住む一極集中型の国では、何も規制がないと首都圏の放送のみに広告が集まることになる。

この広告の結合販売のおかげで地域の中小ラジオはある程度の売り上げを保障され、放送を維持できたといえる。広告の結合販売制度は「放送広告販売代行等に関する法律」で定められている。広告の販売価格が安く、営業力も弱い地域の中小放送局を支援することで、放送の多様性と公共性を確保するのが狙いである。大型放送局に広告が集中しないようにすることで地域放送の財政的安定を図り、地域の文化コンテンツを発展させるといったことも目標としている。ラジオは電池で利用できる小型受信機もあることから、韓国政府は停電や通信ネットワークが途切れた際にも利用できる効果的な災害対応メディアだとして、地方のラジオを支援する方策を模索している。災害に役立つラジオ放送は放送局の利益だけで判断してはならない、国民の生命と安全を守るインフラとして機能するよう支援を続けるべきというのが韓国政府や各省庁の共通した認識だった。

 出稿者に制作費を補助

さらに、韓国には中小企業と自営業者のラジオ広告制作費用を70%(最大300万ウォン)支援する制度もある。毎年上半期と下半期ごとに広告執行計画を評価して選定し、広告の制作費用と広告を活用した営業コンサルティングも提供する。広告制作を支援することで中小企業の販売拡大と売上増加を助け、放送広告市場を活性化させるための事業であり、韓国放送広告振興公社が窓口になる。韓国放送広告振興公社は政府系組織であり、韓国の放送広告販売代理店である。

韓国内ではラジオ広告の結合販売制度をなくすべきという主張もある。これに対し宗教・教育などに特化した中小ラジオ放送9社は20259月に声明を発表し、広告結合販売のおかげで放送の公共性と多様性が毀損されることなく放送の公益機能を維持し、社会の多様性を守れたと主張した。広告の結合販売制度があったからこそ最小限の制作費が保証され放送を続けられたと口をそろえた。

 放送通信発展基金からの支援も

韓国の放送局が電波利用料の代わりに売り上げの一部を収める放送通信発展基金を活用したラジオ局の制作費支援事業もある。「地域放送発展支援特別法」により、韓国放送メディア通信委員会が2015年から3年ごとに地域放送発展支援計画を策定し、同計画に基づき放送通信発展基金で地域放送を支援する制度がある。最新の同計画は2024年から2026年の3年計画で、地方のテレビとラジオの地域密着型番組制作支援拡大、利用者参加型番組制作支援、地域放送のコンテンツ販売支援を行っている。

202511月には国会で、放送通信発展基金で行う地域中小規模放送局の支援予算を現状の約50億ウォンから約200億ウォンへ4倍増とすることを議論し政府に提案したが、まだ決まっていない。国会では、地域ラジオの災害放送強化、独自番組制作支援、公益のための番組制作支援のために支援を増やすべきとしている。

SMS課金で新たな収益源を模索

こうした支援の中で、韓国のラジオ局は広告以外にも収益モデルを確保しようと尽力している。韓国のラジオといえば、リスナーとリアルタイムでコミュニケーションできるSMS(ショートメッセージ)を積極的に活用することが特徴の一つである。ラジオ番組ごとに固有の電話番号があり、全国どこからでもスマートフォンからSMSを送信すると、ラジオ番組のスタジオにメッセージが届く。それをすぐパーソナリティーが紹介するなどして番組を盛り上げる。このラジオ番組あてのSMS1件当たり情報利用料が賦課される有料サービスで、100文字以内の短いメッセージは150ウォン、長いメッセージは1100ウォンである。情報利用料は通信キャリアとラジオ局の収入になる。有料のSMSを利用したくない場合は、ラジオ局ごとにあるアプリをインストールして、そこからチャットで番組にあててメッセージを送信できる。送信したメッセージが番組で紹介されると番組スポンサーの商品がもらえる。投稿はがきが今はSMSに代わった。

SMSを利用してリスナーが気軽に番組に参加できるようにすることで、いつも隣にいる親近感からよりコアなファン層を構築することができた。またSMSのメッセージをビッグデータ分析して番組の方向性を探ったり、新しい企画を練ったり、広告の営業にも生かすなどしている。韓国のラジオ局はリアルタイムでリスナーとつながるこのSMSメッセージ機能を非常に重視しているため、現在検討されている全国のラジオ放送を一カ所で利用できる統合ラジオプラットフォームを作る際に、SMSをどうするかも悩みの種である。

次回はOTT時代・AI時代を迎え韓国ラジオ業界が政府の支援を得て生成AIを使った番組制作にチャレンジした事例と、ラジオスタジオの変化、スマートフォン・スマートスピーカー・AI家電・コネクテッドカー対策としての統合ラジオプラットフォームの準備状況について紹介する。

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