奈良テレビ放送では、自社のXアカウントで、番組の宣伝を、「イラスト」と「文字」で紹介する取り組みを2019年から行っている。自社制作番組でなく、自由に使用できる画像がない中、どう宣伝をするか。"ない"からスタートしたオリジナルイラストでの宣伝。このユニークな宣伝方法について、編成局長の桝谷誠一さんと2019年当初からイラストを担当する編成部の平田美保さんにお話しを伺った。
今夜のゴッドタン👅は...
-- 奈良テレビ放送 (@naratv9) September 24, 2024
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きっかけはメモの落書きから
平田さんは、番組のプレビューを通常業務としている。SNSでの宣伝を始めようとしていた2019年当時、イラストが描けるとは、誰にも知られていなかった。オリジナルイラストでの宣伝を始めようと考えた編成部主任(当時)松谷隆史さんは、平田さんの先輩だった。松谷さんは、平田さんから渡されるメモに落書きがあるのを見て、一緒にやってみないかと、声をかけた。平田さん曰く「メモに落書きを描けるくらい、気安い関係を築いてもらっていた」ときっかけを振り返る。
平田さんは、始めるにあたって、松谷さんから言われたことがある。「番組(演者さん、スタッフさん)へのリスペクトを忘れずに。とにかく紹介する番組に愛情を持つ」。これを胸に、試行錯誤しながらXで発信を続けてきた。
<シンプルながら誰が誰か分かる絵で番組を紹介(『ぴったりにちようチャップリン』紹介2024年9月14日投稿)>
おばあちゃんからのヒント
「愛情をもって」をモットーに、平田さんがプレビューを担当している番組以外もおすすめしたい番組をイラストで紹介している。現在は、『ゴッドタン』『ぴったり にちようチャップリン』『ひみつのアイプリ』『HiHi JetsのHiしか言いません!』など。
作成の方法は、シャーペンでまずは下書き、ペンで清書、その後、水彩色鉛筆で色をつけて、ポイントを水でにじませるなどして、あの味があるイラストが完成する。
<実際に使用している画材道具、肌色と黒色の水彩色鉛筆の減りが著しい>
イラストをXで投稿し始めてしばらくした後、平田さんが乗ったバスの中で、後ろのおばあちゃんたちが「絵てがみ教室」に通い、そこで筆ペンを使っていると会話していた。それを聴いた平田さんは「素人のおばあちゃんが描いても伝わる絵てがみなら」とひらめき、仕上げに筆ペンの採用を決めた。スマホで見る人たちにも、太い線の方が見やすいのでは、という配慮もあったという。
デジタル空間のなかで、目に留まる、あの温かみは、たしかに"絵てがみ"である。
テレビのなかの人
お笑いが好きでテレビ局で働きだし、おすすめしたいバラエティ番組のハイライトとなるようなシーンを描いているという平田さん。
「画力が追いつかなくて、描きたいのに、描ききれないときも」とのこと。休憩時間もイラストについて考えることがあり、「自分でも、ここまで頑張らなくても、と思うときもある。でも、お高くとまってると思われているかもしれないテレビ局だからこそ、人が頑張る泥臭さがあってもええんやないか」と思いを語る。
奈良テレビ放送のXには、著名人からイラストへの反応が届くときがあり、モチベーションの一つになっている。さらに、イラストで紹介した番組の感想の投稿に、番組名だけでなく#奈良テレビ放送が付けられることもあり、平田さんが込めた番組への愛がSNS内の交流に一役買っている。
<"キレイな涙がこぼれる名演"など添える言葉も注目したい(『ゴッドタン』紹介2024年9月3日投稿)>
広がる活躍『笑い飯西田のてくてく大喜利』
そんな平田さんのイラストは、Xでの広報に留まらず、大きく広がり始めている。この秋、奈良テレビ放送が制作する『笑い飯西田のてくてく大喜利』(=冒頭写真、10月8日スタート、隔週火、23:05~23:35)では、オープニングの番組タイトル、サイドロゴスーパー、出演芸人やアシスタントの似顔絵イラスト、取材先に渡す番組オリジナルステッカーまで平田さんのイラストが使われている。
同番組は、特番として2回放送されたが、その時も平田さんがイラストを担当した。「番組で使うと聞いて、ポップな感じがいいと思ったのですが、思ったより脱力が勝って」と平田さん。しかし、結果として、その"ゆるさ"が散歩しながら大喜利をするという番組の企画とマッチし、良いリズムを生み出すことにつながったという。
桝谷さんは「なるべく自由に、らしさを出して、活動できるよう支えていきたい」と語る。なかの人たちの工夫が集まった奈良テレビ放送の取り組みを今後も注目していきたい。
<左から、第1回目放送ゲストの藤崎マーケット・田崎佑一さん、笑い飯・西田幸治さん、案内役の上地由真さん>