【2026衆院選報道】TBSテレビ 「土台」を整え、信頼される持続可能な選挙報道を

赤川 史帆
【2026衆院選報道】TBSテレビ 「土台」を整え、信頼される持続可能な選挙報道を

「報道の土台」を支えるためのDXと取捨選択

「解散検討」の報道から投開票まで1カ月を切る異例の「短期決戦」となった今回の衆議院選挙。この非常に短い準備期間で私たちが大切にしたのは、スタッフが取材に集中できる「報道の土台」を整えることでした。

投開票日の特番の制作では、過去の知見を柔軟に応用し、新たにゼロから作る工程を最小限にとどめ「何をどう伝えるか」前向きに議論する時間にあてました。また取捨選択を徹底し、有権者の「ちゃんと知りたい」に沿わない要素は思い切って削ぎ落としました。また、業務のDXを一段と進め、選挙に関する膨大なデータを可視化・共有する仕組みを構築したことで、単純作業を減らして「有権者に必要とされる情報」を検討する時間を創出しました。担当の垣根を越え知見が共有される環境は、自発的にアイデアが生まれる土壌となり、「報道の土台」を支える地力強化につながりました。

放送と配信の両輪で創る「社会で考える土台」

必要な選挙情報を一人でも多くの人に届けるため、放送とデジタル配信を「報道の両輪」と位置づけ、連携強化しました。「情報のバブル化」が懸念される現代、マスメディアとして分断が進む社会に橋を架け、有権者が未来を考えるきっかけとなる「土台」を創ることは、私たちの重要な使命です。

2025年の参院選から始めた「選挙の日、そのまえに。」という事前報道を一層強化し、地上波の解説に加えデジタルでも多角的な視点を提供しました。その結果、「選挙の日」に対する関心のピークは前回を上回り、開票特番を新しい層へ届けることができました。地上波の広いリーチとデジタルの深掘りした情報を合わせ鏡のように提供することで、多様な価値観を持つ有権者が「自分の一票」を誰に託すか、幅広い世代が選挙を共に考えられる土台を創り出せるよう努めました。

信頼される「情報の土台」としての責任

偽・誤情報含むさまざまな情報が行き交う中、誰もが安心して確認できる「情報の土台」の存在意義は極めて大きなものです。今回の選挙報道では、真偽確認に加え「情報がどう受け止められるか」「一部の言葉が独り歩きして特定の立場の人を苦しめることにつながらないか」など受け手目線の議論も今まで以上に重視しました。議論を真摯に積み重ねるプロセス自体が、情報の信頼性を高める土台作りになると信じ取り組みました。

「対話の土台」をいかに守るか

国民の代表として政治を担う方々に「聞くべきこと」を聞き、その覚悟を伝えることは選挙報道の核心の一つです。しかし「対話の土台」が揺らぎ、取材者の心身の安全が守られなければ、健全な報道は困難になります。

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<左:対話する太田光さん㊧と高市早苗総理㊨
右:消費減税について質問する井上貴博キャスター㊧と高市早苗総理㊨>

今回の開票特番では、スペシャルキャスターの太田光さんが、自民党の公約に掲げられた「消費減税」について、高市早苗総理の覚悟を聞いた場面に対し、SNSで多くの投稿がありました。厳しいご指摘から、政治家が公約を実行する覚悟を問うものだと擁護する声まで、社会の多様な価値観を映し出す幅広い声が寄せられました。

国際秩序が揺らぐ中、日本は何を見てどう進むのか。社会に寄り添った情報発信には、記者や出演者が萎縮することなく、対話し率直に質問できる環境が不可欠です。多様な意見を糧としつつ、度を超した誹謗中傷などからスタッフを守り、対話に臨める環境を整える。「対話の土台」を守り、幅広い視点の意見が行き交う場を整えることが、高度な情報化社会でより一層重要な課題になると考えています。

結びに

AIの進化に伴い情報環境が激変する中、問題の本質を見極め、必要な問いを発する重要性はますます増しています。取材を通して有権者一人一人に必要な情報を届けられるよう、大学など研究機関とも連携し、粘り強く検討を進める必要があります。新たな技術による効率化で取捨選択に取り組みつつ、「社会の役に立ちたい」というスタッフの素朴な思いを組織として守り育てることが、信頼される持続可能な選挙報道につながると信じています。


TBSテレビ DIGメディア局コンテンツ編集部デジタル統括編集長
赤川 史帆(あかがわ・しほ)

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