【2026衆院選報道】日本テレビ放送網 ファクトチェック勉強会や政策企画の充実 有権者のニーズにあわせ"強み"を磨く

井上 幸昌
【2026衆院選報道】日本テレビ放送網 ファクトチェック勉強会や政策企画の充実 有権者のニーズにあわせ"強み"を磨く

体感では「人生最短」の1カ月だった。記憶もおぼろげなジェットコースターな毎日。自民党の歴史的大勝を生んだ今回の衆院選を日本テレビ放送網(以下、日テレ)報道局はどう伝えたのか。

系列30局でファクトチェック勉強会

事前報道のあり方を大転換した2025年の参院選から半年。一定の手応えを感じていたこと、投開票まで時間がないことから、大胆なイノベーションには踏み込まず、"強み"の磨き上げに注力した。報道局のあらゆる部署が一同に集まる「選挙報道プロジェクト」をすぐに再始動させ、意思決定を一元化しスピードアップ、部の垣根を越えたメンバーの「知」の結集を図った。

日テレ系列30局が参加するNNN(Nippon News Network)では急遽、ファクトチェック勉強会を開催。民主主義の根幹である選挙を機能させるべく、系列全体での意識合わせとスキルの共有を行った。なぜか。高市"人気"と、躍進も想定される参政党のエッジの効いた政策、生成AI技術の進化などもあり、前回以上に偽・誤情報や極端な主張が選挙をかく乱する恐れがあると考えたからだ。

勉強会では対象とする言説の選び方、拡散を生む"ナラティブが生まれやすい土壌"が選挙区に生まれていないかなどを警戒しリサーチする具体的方法、放送時の注意点までテーマを幅広く設定した。最終的にはNNN全体の情報共有チャットを立ち上げて衆院選に備えた。さらに有権者の投票行動に真に役立つ選挙情報を多く広く届けるためにも、公平性は「量」ではなく「質」で判断することも再確認。2025年の参院選報道の事例を題材にブレストを行った。

再始動「投票前に考える それって本当?」

日テレでは2025年に続きキャンペーン「投票前に考える それって本当?」を連日展開。調査報道を得意とするメンバーが担った。超短期決戦であることから、序盤は拡散しそうな情報やその仕組みを視聴者に予習していただく「プレバンキング」(偽・語情報などが流通・拡散する前の備え)に力を入れた。2025年10月の宮城県知事選の事例を取り上げたほか、投票用紙への書き方について無効票につながる恐れがある情報が拡散されたことなどを伝えた。さらに、一部の街頭演説会場で起きていることではあるが、抗議活動が激しさを増している実態をVTRと解説で伝えた。民主主義の根幹である選挙と「表現の自由」について考えるキッカケを提供できればとの思いからだ。

比例投票に役立つ「政党フカボリ」

「投票行動に資する選挙情報」では、衆院選が比例代表で政党名を記す制度のため、政党企画の充実に力を入れた。「政党フカボリ」と題したコーナーでは、各党の選挙戦略ではなく、4年間国政を託すにふさわしい政党はどこなのか、という有権者視点にたって各党の「現状と課題」を伝えた。また、情勢調査を受けて「チームみらい」への関心が高いことがわかったため、より多くの情報を有権者に伝えるべきと判断。選挙戦の後半からは「みらい」をより丁寧に報道する方向にシフトさせた。「質的公平性」を重視した選挙報道を実践した一例だと考えている。

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<比例代表制にあわせて政党企画を充実>

各党の政策については平日夕方の『news every.』で、今回の選挙で3回目となる「ひと目で分かる政策比較」を展開。関心の高い「消費税」「外国人政策」「外交安保」に加え、「働き方改革」「マンション価格の高騰対策」など暮らしに直結する課題も展開し各党のスタンスの違いを浮き彫りにした。

『news zero』は党首討論に加え、今回も藤井貴彦キャスターが党首への個別インタビューを行った。地上波では5分ほどのVTRにまとめ、デジタルでは全編を公開。この取材を通じて各党首との間合いを「合気道」のようにはかる藤井キャスター流インタビュー術を進化させ、選挙特番に臨むことができた。

『zero選挙』高市首相の"生"にこだわる

その特番『zero選挙』(=冒頭画像)。全時間帯で多くの視聴者から、支持をいただくことができた。視聴者が「この夜に知りたいコト」にこだわる番組作りを継続。この選挙の「監督」兼「主役」である高市早苗首相の一挙手一投足を伝える"生中継"を徹底して行った。同時に現場記者の速報中継や解説機能を強化することで、歴史的な出来事をより深く知りたい視聴者ニーズにフィットさせた。

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<2月8日放送『zero選挙』開票速報より>

次の国政選挙は2年半後の参院選となるのか。政治情勢も国際情勢も有権者を取り巻く情報環境も大きく変わっていることが想定される。ここまで積み上げた選挙報道の大原則を大事にしつつも、有権者のインサイトを捉えた事前報道のアップデートがこれからも求められる。


日本テレビ放送網 報道局政治部長
井上 幸昌(いのうえ・ゆきまさ)

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