今回の衆院選報道を振り返ると、政治記者としては最も言いたくない言葉の一つである「想定外」に「どう対応するか」が最大の課題だったと感じる日々だった。
通常国会が1月23日召集となったことで警戒を緩めていたところに降って湧いた「高市早苗首相1月解散・2月選挙検討」との報道。そこから選挙の事前報道、情勢調査と判定の準備、特番の制作を同時に走らせる怒涛の日々が始まった。特番制作については、幸い演出陣の体制だけは昨年から決まっていたが、チーフプロデューサーを現場取材の軸である与党キャップが務めるという異例の陣容だっただけに、解散取材と特番準備という過酷な二刀流を強いることになった。しかしこの想定外にも、不屈の対応力で乗り越えてもらった。
事前報道は今回も「もっと 投票の前に」を継続
そして各局が力を入れている選挙の事前報道は今回も勝負どころ。臨時で態勢を構築したが、時間がない分、新たな挑戦をする余地は限られ、2025年参院選で行ったキャンペーン「もっと 投票の前に」を今回も同タイトルで展開し、いかに発展させるかに焦点を絞ることになった。これまでの選挙区ルポや各党の戦略分析も行うが、視聴者の投票判断に役立つよう、各党の政策比較・深掘りにより注力した。

<各党の政策比較・深掘りに注力>
新党が続々誕生で政策比較にも影響が
ここでの想定外の一つが、「中道改革連合」と「減税日本・ゆうこく連合」の結党だった。特にゆうこく連合は急ごしらえの政党で、網羅的な政策もないので、政策比較がしづらい分野も多かった。ここで難しいのが、政策比較を行う際のベースを、各党の「選挙公約」に絞るのか、少し以前のものも含めた「政策集」に広げるのか、さらに「党首や幹部の過去の発言内容」にまで広げるかだ。それぞれ濃淡があるので悩ましいが、そこは視聴者へのわかりやすさと質的公平性に基づいたケースバイケースでの対応で乗り切ることとした。また、非核三原則の是非やインテリジェンス機能強化など、公約に必ずしも書かれていないことも政策比較の対象とした。過去の発言などから少しでもスタンスをわかりやすく伝える努力をしたが、書いていないものをどのようにカテゴライズして伝えるかに難しさも感じた。

<質的公平性に基づき政策比較>
一方、ネット上で起きていることを番組でどう伝えるかは、今回も悩みの種だった。影響力を増すネット上の選挙動向を伝えることは重要だが、そのまま伝えることはネットでの流れをネットと距離を置いている人にも広げ、さらに加速させるだけになる恐れもある。ネット上の発信や動画の政党別ポジネガ分析などは興味を持ったが、選挙戦中に伝えることがふさわしいのかどうか悩み、今回は見送る判断をした。どのような報道の仕方が、ネット上の動きを冷静に伝えることにつながるのか、今後さらに検討が必要な要素だと感じる。
そして議席予測や当落判定上の「想定外」は、大勝した自民党にとっても最大の想定外となった比例名簿の不足による議席の移動だった。幸い比較的早めに覚知し対応したことで、議席予測にも活かすことができ、正確な予測を保つことができたが、あらためて綿密な調査とシミュレーションの大切さを感じた。
ファクトチェック報道はやや限定的に
今回、ファクトチェックについては、むやみに行うことが逆に偽・誤情報の拡散につながるという逆説的な傾向・指摘も踏まえ、やや限定的に取り組んだ。また、本来は取り上げてみたかった「外国勢力のSNS等による選挙介入」については、今回は明確なファクトがなかったか、あるいはわれわれとしてつかめなかったことで扱いを見送った。もう少し時間的余裕があれば異なる取り組みができた可能性もあり、次の選挙への課題と言えるかもしれない。
「投票率」と「投票質」の向上に資する選挙報道
いずれにしても「想定外」を「対応力」でどうにか乗り切った感のある選挙戦だったが、投票率が向上したこと自体は、民主主義国家として喜ばしいことだろう。今後も「投票率の向上」、そして熟慮を重ねた冷静な投票という「投票質の向上」に資する報道を心がけていきたい。
フジテレビジョン 報道局政治部長
髙田 圭太(たかだ・けいた)
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