第60回ギャラクシー賞 3年連続で民放3番組が大賞獲得

編集広報部
第60回ギャラクシー賞 3年連続で民放3番組が大賞獲得

放送批評懇談会が主催する第60回ギャラクシー賞の贈賞式が5月31日、都内で開催された。第58回から3年連続で、テレビ、ラジオ、報道活動の3部門の大賞を民放が獲得。優秀賞には民放から5作品が輝いた。

司会はジョン・カビラさんと長野智子さんが担当。来賓祝辞で、遠藤龍之介・民放連会長が「カビラさん、私が(スピーチの)最初でいいんでしょうか」と尋ねると「いいんです!」とおなじみの言葉が飛び出す場面も。各部門の贈賞では受賞者が壇上で喜びを言葉にした。

テレビ部門は関西テレビの『エルピス-希望、あるいは災い-』が大賞に輝いた。連続殺人事件で犯人とされ死刑が確定した男の冤罪疑惑を、スキャンダルによってエースの座から転落したアナウンサーとバラエティ番組の若手ディレクターらが追った骨太のドラマ。警察、政治、テレビ報道のあり方を問い直すメッセージをドラマに昇華させたことが高く評価された。

大賞発表後、プロデューサーを務めた関西テレビの佐野亜裕美氏に加えて、同ドラマの演技と『鎌倉殿の13人』(NHK)のナレーションで同部門の個人賞を受賞した長澤まさみさん、『エルピス――』の演出を担当した大根仁氏も登壇(=冒頭写真、左から順)。佐野氏は、「ドラマを作るときにはたくさんの力をお借りしているが、エルピスは考えられない数の方々に協力いただいて制作できた」と感謝を述べるとともに、「タブーに切り込んだ意識はないまま放送し、周囲から『大丈夫だったのか』『すごくリアルでびっくりした』と反響があり、正直驚いた」と明かした。続編の意欲については「1ミリもない」と即答、「演者、スタッフ含めて次に進んでいる。今日の喜びを忘れず新しいドラマを作っていきたい」と意気込みを語った。

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<関西テレビ 佐野亜裕美氏

報道活動部門の大賞は、広島テレビの「ドキュメンタリー素材を平和教材として活用」の取り組み。アーカイブ映像を世界の教育関係者が活用できる平和教材へと発展させ、平和への想いを育み、未来へとつなぐ活動が評価された。

報道制作局報道部ディレクターの鶴紗也子氏は、「ドキュメンタリーは、放送での役目が終わるとアーカイブ室に眠ってしまう。今となっては聞けない被爆者の貴重な証言を、どうにか未来につなげないかと考え、平和教材を作ることにした」と説明。今年1月に英語版も一部完成し、「米国の高校教員から利用したいと問い合わせがある」と取り組みの広がりを語った。

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<広島テレビ 鶴紗也子氏

ラジオ部門は琉球放送の『RBCiラジオスペシャル「ダニーボーイ・齋藤悌子、ジャズと生きる」』が大賞を受賞した。本土復帰前の沖縄で毎晩米軍基地のステージに立ち、その歌声で兵士たちを癒し続けた齋藤悌子(さいとう・ていこ)さんの物語。齋藤さんの人生をとおして、戦争の不条理、沖縄の問題を浮き彫りにし、平和へのメッセージも伝わる今日性の高い作品と評価された。

ディレクターを務めた琉球放送の狩俣倫太郎氏は「デージヤッサー(大変)うれしい」と沖縄の方言で第一声。主人公の齋藤さんは87歳、現役で歌い続ける奇跡のジャズシンガーで「激動の時代の中で音楽を愛する信念を貫いてきた、齋藤さんのしなやかさ、強さを受け取ってもらいたい思いで制作した作品が評価された」と喜びを語った。

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<琉球放送 狩俣倫太郎氏

ラジオ部門のDJパーソナリティ賞は、TBSラジオ『安住紳一郎の日曜天国』でパーソナリティを務める安住紳一郎アナウンサーが受賞。「『ラジオが好き』と言ってくれる全国の皆さんがいるから、ずっと続けてこられた。アシスタントの中澤有美子さんとリスナーの皆さんと一緒に喜びたい」と述べた。

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<安住紳一郎アナウンサー

昨年度までテレビ部門として位置づけられていたフロンティア賞は、今年度から部門を越えた賞として未来に踏み出すより幅広い取り組みを評価することに。「FIFA ワールドカップ カタール 2022」生中継でテレビ朝日とABEMAに贈られた。テレビ朝日スポーツ局スポーツ2部プロデューサーの河本祐典氏は、「長年の中継ノウハウを引き継ぎ、魂を込めて制作した。テレビ×インターネットの力を視聴者に伝えられたと思う」と手応えを語った。

テレビ番組を対象に視聴者が投票を行うマイベストTV賞のグランプリは、毎日放送のドラマイズム『美しい彼』(シーズン2)が、昨年のシーズン1に続いて受賞。放送文化や放送事業に貢献した個人を称える志賀信夫賞は、演出家・脚本家としてドラマをはじめ幅広い分野で数々の名作を生み出した岡崎栄氏、放送批評懇談会60周年記念賞はタモリさんに贈られた。

贈賞式の模様はYouTubeでライブ配信を行い、のべ視聴回数は約11万3,000回、最大同時接続は約1万6,600アクセスだった。6月8日正午からアーカイブ配信を行っている。

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第60回ギャラクシー賞 優秀賞
(選奨・奨励賞とCM 部門はギャラクシー賞のウェブサイトを参照)
【テレビ部門】
▷OTV報道スペシャル「水どぅ宝」
(沖縄テレビ)
▷報道1930「激震・旧統一教会と日本政治 問われる政治との距離感は」
(BS-TBS)
▷世界サブカルチャー史 欲望の系譜 シーズン3「日本 逆説の60-90s」
(NHK NHKエンタープライズ テレビマンユニオン)
【ラジオ部門】
▷講談風大河ラジオドラマ「弁慶記」
(FM TANABE)
▷ドキュメント「荻上チキが見たウクライナ~見過ごされる声に耳を傾けて」
(TBSラジオ)
▷仲谷一志・下田文代のよなおし堂
(RKB毎日放送)
【報道活動部門】
▷NEWS6 旧統一教会をめぐる調査報道
(チューリップテレビ)
▷NHK 精神医療の実態に迫る一連の調査報道
(NHK)


※ 配信に関する内容を6月9日に追記しました。

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