Amazon Prime Videoの広告モデル始まる CM回避には月額3㌦

編集広報部

Amazon Prime Videoの広告入りプランが1月29日に米国市場で始まった。現在、同国のAmazon Prime料金は月15㌦(年間139㌦)だが、この契約だけではテレビ番組や映画に広告が入る。見たくない会員は月3㌦の追加料金を支払わなければならない。英国、ドイツ、カナダでもほぼ同時に始まり、24年の後半にはフランス、イタリア、スペイン、メキシコ、オーストラリアにも拡大する予定だ。

競合他社の広告入りプランの契約料はNetflixが月7㌦、ディズニー+とHuluのバンドルが月8㌦。Amazon Primeの月15㌦は他社より割高だが、オンラインショッピング(Eコマース)の特典が含まれているため単純比較は難しい。会費は今年いっぱい据え置くとAmazonは発表している。

広告を導入する今回の方針は23年9月に発表された。リニアテレビや競合の配信サービスよりも広告は少なめに抑えるとの触れ込みだった。米メディアによると、AmazonはEコマースのデジタル広告事業の延長でPrime Videoの広告を扱うため、自社で入手した顧客データをもとに競合他社より安価に広告販売が可能になるという。Amazonの参入で業界全体の広告費が引き下げられる可能性もあり、今後は広告争奪戦の激化が予想される。

米金融大手モルガン・スタンレーはAmazon Prime Videoが24年に全世界で33億㌦(約5,000億円)の広告を売り上げると予測。25年に52億㌦、26年は71億㌦に増えるという。調査会社Moffett Nathansonの予測は24年の売上額を13億㌦、翌年が23億㌦と、モルガン・スタンレーよりかなり慎重だ。しかし、23年第3四半期にAmazonは全体で120億6,000万㌦(前年同期比26%増)の広告を売り上げており、デジタル広告市場で大きなシェアを占めている。Prime Videoの広告導入はそれをさらに伸ばし、AVOD(広告付き無料動画配信サービス)やCTV(コネクテッドTV)業界に地殻変動をもたらすとも言われる。独占配信されるNFLの「Thursday Night Football」も大きな武器だ。

Amazon Primeは米国内で9,600万人の会員数を有するが、そのすべてがPrime Videoを定期的に利用しているわけではない。Moffett Nathansonや消費者動向に詳しいCivicScienceは会員のうち定期利用者を約7,000万人と推計しており、そのほとんどは広告入りモデルを受け入れるだろうと予測する。追加の3㌦を払って広告視聴を避ける会員は10%―15%程度ではないかとみている。

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