YouTubeはBBCに次ぐ人気メディアに~英Ofcom調査「Media Nations 2025」

編集広報部
YouTubeはBBCに次ぐ人気メディアに~英Ofcom調査「Media Nations 2025」

英国の放送・通信事業を規制監督するOfcom(放送通信庁)は7月30日、毎年実施している英国民の視聴習慣に関する包括的な調査「Media Nations 2025」を発表した。それによると、YouTubeITVを抜き、BBCに次いで2番目に視聴されているメディアサービスであることがわかった。

 2024年について、自宅でのテレビや動画の視聴時間は平均1日4時間30分で、その56%はテレビ放送が占めた。ただ、YouTubeの利用も増えていて、自宅で1日平均39分間同サービスを利用しており、そのうち16分はテレビでの視聴だった。

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〈全世代の家庭内1日平均テレビ視聴時間(すべてのデバイス) 出所:Ofcom「Media Nations 2025」〉

この傾向を牽引しているのは1634歳の若年層で、4~15歳のα世代の20%は、テレビをつけるとまずYouTubeにアクセスしている。一方、55歳以上でも、YouTubeの利用時間が1日あたり6分から11分とほぼ2倍に増えており、その視聴の42%(前年比9ポイント増)はテレビで行われるなど、シニアにとってもYouTubeが日常的なメディア接触の一部となりつつある。

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〈BBCもリニア視聴より、BBC iPlayerでの視聴が目立つ 出所:Ofcom「Media Nations 2025」〉

 Ofcomによると、若年層にとって、決まった時間に放送されるテレビ番組はますますなじみのないものになっており、リモコンを手にしてまずはYouTubeにアクセスするのが定番となっている。

 YouTubeで人気のコンテンツの半数は、ロングインタビューやゲーム番組など、テレビ番組に近いものであり、この"進化"によって広告収入に依存するテレビサービスの直接的な競合相手となっている。半面、放送局にとっては若年層にリーチする手段ともなっている。 

すでに公共サービス放送(PSB)各局はYouTubeで自社番組の配信に取り組んでいるが、Ofcomは7月21日に発表した報告書「Transmission Criticalで、PSBの生き残りには、オンラインプラットフォームと連携し、より利用しやすく、目立たせることが不可欠として、議会に法的整備を検討するよう提言している。今回の報告書は、その必要性が裏付けられるものとなった。

 Netflixをはじめとする米大手ストリーミング事業者は過去2年間で20%売上増の急成長をみせ、2024年には英国での売上が437,000ポンドと10%超の伸びを示した。Ofcomによれば、市場の成熟とコスト高による加入者数の伸び悩みで、成長基調は続くものの、次第に鈍化している。この状況を打開するため、ストリーミング事業者は広告枠の拡充を進めている。Netflixの広告付きストリーミングサービスに加入しているのは、前年比倍増の28%、Disney+は3倍の23%に達した。

一方、放送事業者によるビデオ・オン・デマンド(BVoD)の売上が前年比15%増の11億ポンドと、初めて10億ポンドを超えた。ITVXChannel4Channel5を含め、BVoDは放送局の広告収入の4分の1を占めている。

特にBBCのオンラインサービスは好調で、BBC iPlayerBBC視聴の20%を占めるまでになっている。また、今回初めてオンライン番組の視聴が録画視聴を上回った。

しかしOfcomは、PSBはこの変化を踏まえ、価値ある公共放送メデイア(PSM)としてその持続可能性を担保するために、一層野心的な取り組みが必要だと指摘している。

 2024年のテレビ視聴時間は全体で前年比4%減、1日の平均視聴時間は2時間24分に減少した。1624歳の若年層に限ると、リアルのテレビ視聴時間は1日平均17分にとどまった。また、毎週テレビ放送を視聴する割合は45%で、前年の48%からさらに減少した。

家庭でのオーディオ聴取において、1624歳が放送局のコンテンツを聴取する割合は4分の1未満、75歳以上では90%と、世代間で大きな違いがあることが浮き彫りとなった。

全体ではVoDのコンテンツを1日平均40分視聴している。なかでもNetflixが最も人気のあるサービスで、1日平均22分視聴され、ストリーミングプラットフォームでの視聴時間の半分超を占めている。

 ただ、国民を団結させる力については圧倒的にテレビに軍配があがる。2024年の最も視聴された番組トップ3は、1,860万人が視聴した「Gavin and Stacy: The FinaleBBC)」、1,690万人が視聴した「Wallace and Gromit: Vengeance Most FowlBBC)」、1,470万人が視聴した「Mr Bates vs The Post Officefourth episode)(ITV)」と、いずれもBBCITVが占めた。

また、スポーツイベントでも地上波テレビが強みを発揮している。スペイン対イングランドの「Euro 2024」決勝戦はBBCITVSTVを通して1,980万人が視聴し、最も視聴されたライブスポーツイベントとなった。

 一方、英商業テレビのマーケティング団体Think Boxは、近年Ofcomが発表する報告書の見出しが、センセーショナルで、事実から乖離しており、英国にとって重要なクリエイティブ産業や広告産業に不利な状況を生んでいるとして、批判している。

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