英政府がBBCの次期特許状の検討を開始 広告モデルやサブスク課金の導入も視野に

編集広報部
英政府がBBCの次期特許状の検討を開始 広告モデルやサブスク課金の導入も視野に

英国政府は2025年12月16日、2028年以降のBBCの事業運営について、現行制度の見直しも含む検討を開始すると発表した。BBCの特許状(Royal Charter)の更新時期を前に行われるもので、現行特許が満了する27年12月末までに同国の公共放送サービスのあり方が政府との協議を通じて見直される。

政府はBBCの将来を見据え、これからも英国民に最良のサービスを提供し続けられる環境を整えるとしている。ただし、懸案となっている放送サービスをインターネットでの配信に移行するかどうかは含まれていない¹ 。最も注目されているのは、徴収額が漸減傾向にある受信許可料(年間174.50 ㍀=約3万6,900円)に頼っている現行の財源モデルの見直しだ。

10年前の見直しで、当時の政府は「英国の広告市場規模はBBCを維持するには不十分であり、広告モデルへの全面移行は望ましくない」との考えを前提としていたが、今回、文化・メディア・スポーツ省(DCMS)のリサ・ナンディ大臣は「財源は全ての選択肢を検討する」としている。ただし、BBCの独立性を維持するため税金による資金調達や配信サービスの収益への課税は排除するという。

DCMSは同じ12月16日に協議の叩き台(グリーンペーパー)を公表し、3月10日まで意見募集を行っている(冒頭画像は英政府の意見募集告知/中央がリサ・ナンディDCMS大臣)。具体的には▶BBCの現行の受信料の徴収制度を変えるべきかどうか、▶広告モデルの全面導入あるいは一部(オンライン広告のみ)導入に賛成するか――を初めて問いかけている²(回答には「広告は一切入れない」という選択もある)。

民放への配慮もあってか、政府は、放送では広告を入れず、受信許可料を財源とした無料の動画配信サービス「iPlayer」のプラットフォーム上にオンライン広告を導入することも選択肢としているが、業界の総広告収入が減り続けているなか、民放の反対は必至と思われる。すでに商業ラジオ連盟(ラジオセンター)は「(BBCへの広告の導入は)商業メディア事業を壊滅させる」との声明を即日に発表。英新聞協会も「BBCがオンライン広告を導入すれば商業市場に甚大な損害を与え歪めることになる」と反対を表明した。

このほか、ニュースや時事問題、ドキュメンタリー、子ども向けテレビ番組などは引き続き受信許可料から資金調達し、誰もが無料視聴できることを確保する。一方、ハイエンドドラマなどのプレミアムコンテンツは課金するという利用者のタイプ別に差別化した料金体系の導入や、配信コンテンツで課金(サブスクリプション)を導入する案についても意見を求めている。iPlayer上で無料視聴できるコンテンツを限定し、例えば見逃しとは異なる、過去のBBCのアーカイブコンテンツや、大型ドラマなどのプレミアムコンテンツに課金モデルを導入する案を選択肢として挙げている。これらの質問内容から、政府が受信許可料とは別の収入源を組み合わせるハイブリッドモデルを模索している印象も受ける。

こうした背景には、支払い滞納者(特に高年齢の女性層)の扱いにBBCが苦慮していることがある。法律的には罰金などの厳しい処分も可能だが、実施すれば社会問題となるのは避けられない。他方、政権交代しても、政府はできるだけ国民への負担軽減を望んでいるが、BBCは「これ以上の節約は質を落とさずにはできない」と訴えてきた。

ちなみに見直しプロセスでは先般発覚したBBCニュースの動画編集問題³(関連既報) などで批判が集中した報道姿勢やBBCの監督強化についても突っ込んだ協議が行われる。グリーンペーパーで政府は「編集およびガバナンスで最近、重大な失態があった。(中略)国を代表する局としてBBCは最高水準を維持する責任を負っており、この基準が満たされなかった場合は断固として迅速な措置が取られねばならない」としている。同問題でBBCからの退任が決まっているティム・デイビー会長はこの問題には触れていないが、意見募集の開始を歓迎するコメントを発表している。

政府は意見募集の結果を精査し、26年秋までには方針を発表する見通しだ。BBCとの協議はこの間も続けられるが、デイビー会長の後任はまだ決まっていない。


¹ テレビ配信の将来や公共サービスメディアの将来枠組みを広く検討する作業が並行して進められており、政府はBBCや他のメディア事業者と連携し、BBCやその他の公共サービスコンテンツが視聴者に最も効果的に届くプラットフォーム経由で配信される方法、デジタル時代に適合した規制の更新方法など、変化するメディア・技術環境がもたらす課題と機会への戦略的対応を策定することになっている。今回のグリーンペーパーでは、この検討作業の結論を出して新たな特許状に反映させるとしている。

² 10年前の公開ヒアリングでは、BBCの財源資金の調達方法を受信料、世帯一律徴収、広告収入、課金などから1つ選択することが求められた。当時、受信許可料制度を支持したのは75%、広告収入を選択したのは1.4%、一部課金2.3%、全部課金(サブスクリプション)で賄うことを選んだのは3.1%だった。
  
³ BBCのドキュメンタリー番組『PANORAMA』が2021年1月6日の米トランプ大統領の演説で誤解を招く編集を行い、編集委員会で問題視されたにもかかわらず適正な処置がとられなかったことが英ザ・テレグラフ紙の報道をきっかけに騒動になった。皮肉にも、見直し協議が正式にスタートした12月16日、トランプ大統領がこの件で名誉が毀損されたとしてBBCに100億㌦(約1兆5,000億円)の訴訟を起こしている。BBCは裁判で戦う姿勢だ。
  

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