英BBCが2023年度事業計画 大幅な赤字見込む

編集広報部

英BBCは3月30日に発表した2023年度の事業計画で本年度は3億5,200万ポンド(約612億円)の赤字予算となることを明らかにした。その規模は前年度比3割増で、3億ポンドを超えるのは国際放送のBBCワールドサービスが初めて受信許可料で運営されることになった2014年以来となる。2022年からの受信許可料据え置きに加え、支払い逃れによる収入減(前年度比−4%)と厳しい状況が続くなか、高インフレで経費が5割増え、大幅な経費削減のもとで進められているリストラの経費が増えた(同+85%)ことが要因だ。

BBCはティム・デイビー会長が22年春に発表した中期戦略(デジタル・ファースト)のなかで、27年度までに年間2億8,500万ポンド(約495億円)削減するとしていた。しかし、本年度の赤字を補うため削減目標を4億ポンドに引き上げ、計画では、新たな番組発注を1,000時間分削減する方針を示した。一方、「BBCが大規模なデジタル公共サービスメディア組織へと変貌を遂げるための戦略を推進する基礎となる年」と位置づけ、動画配信サービス「iPlayer」の新番組に多額の予算を振り向けるほか、向こう2年間でデジタル分野の予算を年5,000万ポンド(約86億円)の予算を増額する。これにより、配信サービスのパーソナライゼーションやAI、データサイエンスを駆使する能力の開発を加速させるとのことだ。

計画ではこのほか「政治的・商業的な利害を恐れず、ひいきせずに、すべての視聴者に奉仕する」とし、今年の重要なステップとしてBBCを世界で最も開かれた"ニュースルーム"とするためのキャンペーンを展開し、取材の舞台裏を公開するニュースを増やしている。この背景には、BBCのリチャード・シャープ理事長がボリス・ジョンソン元首相の融資の手助けをしたとする批判や、英政府の難民政策をツイッターで批判したとして人気司会者を降板させたBBCの処分が「政治的中立性」に反しているといった国民の批判もあるという。ちなみに、シャープ理事長は4月28日に辞任を表明している。ルーシー・フレイザー文化・メディア・スポーツ担当大臣は6月2日にエラン・クロス・スティーブンス氏(現BBC非常勤理事)を理事長代行に任命した。同氏は代行としてとどまり、英国政府は新たな理事長を任命する作業に着手する([※])


[※]【追記】BBCの理事長に関して6月1日の公開時には「6月にも新たな理事長が任命される模様だ」と記述しましたが、翌2日に理事長代行の任命がありましたので修正しました(6月8日11時修正)。

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