イギリスで番組視聴率を測定しているBARB(The Broadcasters' Audience Research Board)は2月21日(現地時間)、測定対象を放送局のコンテンツだけでなく、SNS系のビデオ共有プラットフォームを通じて視聴される「テレビに適したコンテンツ(fit-for-TVコンテンツ)」まで拡大することを発表した。
BARBは設立40周年となる2021年に視聴測定システムをアップグレードし、調査パネル宅に設置した新型の測定機器からSVODサービス(Netflix、Amaxon Prime Video、Disney+)や、ビデオ共有プラットフォーム(YouTube、TicTok、Twitch)などの視聴データの集計が可能となり、同年11月からは、視聴日報にこれらのデータが加えられている。ただし、ビデオ共有プラットフォームについては、「テレビ番組のような」コンテンツを調査対象にするにあたり、長さや内容もさまざまで膨大なコンテンツの中から、どのコンテンツを測定するかについて、意見の集約が求められていた。
BARBは昨年9月に、放送局、広告主、広告会社、そして動画共通プラットフォームから動画広告エコシステムの実務者を集め、「視聴測定の対象となるべき動画共有プラットフォーム上のコンテンツの種類に関する協議」を実施。測定に値する「テレビ的なコンテンツ」について以下の選別要件が作られた。
- 編集者が存在し、監督者がいるコンテンツ(いわゆるプロが制作したもの)
- 法規制を遵守、または、現行の法規制に沿ったコンテンツ
- 広告主にとって安全で適切な環境を提供するコンテンツ
BARBは、これらの要件をすべて満たしたコンテンツを、「テレビに適している(fit-for-TV)」と判断し、今後、視聴測定対象にする方針を示した。BARBは、YouTubeですでに視聴測定されている放送局のコンテンツに加え、ブランドセーフティ基準に沿って制作された全てのコンテンツを測定したいとの意向で、今後測定対象が大幅に拡大することになる。
ただし、コンテンツの視聴環境についての議論から、刷新される予定の視聴者リポートには、コンテンツだけでなく、使用デバイス、視聴時の音のオンオフなどを含めるべきであることが指摘されており、測定拡大にあたり、項目やリポートの形式をどうするかについて整理課題が残っている。BARBのサンプソンCEOは、今回の報道発表にあたり、「動画共有プラットフォーム上のコンテンツのリポートをいつ、どのように拡大するかについては、まだすべての答えを持っているわけではない」と述べている。そして、「(BARBの)測定能力は、調査対象となりうる制作会社や、配信プラットフォームのBARBへの積極的な参加によって向上する」とし、協力を呼びかけた。ちなみに、2022年4月にSVODサービスに広告モデルの導入を発表したDisney+は、7月にBARBに正式参加。その後、Netflixも広告モデルの導入に合わせ、BARBに加わり、測定のためのコンテンツタグ情報をBARBに提供している。
今後、放送局以外の参加社が増加することを想定してか、BARB は今回の発表を機に、社名をBarb Audiences Ltdに変更し、放送(Broadcasters')の言葉が直接的には消えたものとなった。動画サービスの環境が変化する中、業界標準となる視聴測定を拡大し続けるという同社の積極的な姿勢を反映したものだとのことだ。