米CBS『60 ミニッツ』 半世紀にわたりニュースの視聴者数トップを維持

編集広報部
米CBS『60 ミニッツ』 半世紀にわたりニュースの視聴者数トップを維持

米CBSの『60ミニッツ(60Minutes)』(毎週日曜夜放送/冒頭写真は同番組の公式ウェブサイトより)は1968年のスタートから56年続く調査報道の長寿番組。その『60ミニッツ』が地上波・ケーブルのニュース番組として平均視聴者数で50年間トップの座を維持し続けている(ニールセン調べ)。米国の各メディアは記念すべき「半世紀間トップ」を称えている。

『60ミニッツ』が初めてニュース番組部門の平均視聴者数トップとなったのは1974~75年のシーズン。テレビの昨シーズン(23~24年)中、スポーツ以外のプライムタイム番組でトップにランキングされた回数は15回。また、過去3シーズンのゴールデンタイム番組で総合首位を14回獲得している。今年4月8~14日の週、地上波番組ランキングで『トラッカー(Tracker)』『ヤング・シェルドン(Young Sheldan)』(いずれもCBS)といった人気ドラマ勢を抑え、視聴者数900万人で堂々のトップに立った。

配信サービスの台頭で地上波・ケーブルのニュース番組が苦戦を強いられる近年、『60ミニッツ』は特に安定して高い視聴者数を記録している。『60ミニッツ』が始まった当時、全米の世帯はニュース番組を楽しみにしていた。報道の内容への信頼度も高かった。しかし、インターネット時代になり、ソーシャルメディアで誤情報が氾濫するようになると、ニュース・報道に対する国民の信頼度までが下がった。ニールセンによる過去10年間のデータをみても、『NBC Nightly News』『CBS Sunday Morning』といったライバル番組がランキングで上がり下がりを繰り返し、放送を中断・再開する番組もある。それだけに、今なお高い視聴者数を誇る『60ミニッツ』は評価に値すると米各メディアは報じている。『60ミニッツ』のビル・オーウェンズ プロデューサーは「この50年、変わらぬ報道姿勢を貫き、番組の伝統を守ってきた」と話している。

『60ミニッツ』の長寿と成功の秘密のひとつが、時々の話題の人物にタイムリーなインタビューを行ってきたことだ。23~24年シーズンにはバチカン市国でローマ教皇フランシスコに独占インタビューするなど歴史に残るプログラムも実現した。08年の大統領選挙ではバラク・オバマ大統領の当選後、真っ先に独占インタビューしている。

しかし、その裏で問題がなかったわけではない。18年にはベテランプロデューサーのジェフ・フェイガーがセクハラスキャンダルで解雇され、13年にはリビアのベンガジで起きたアメリカ領事館襲撃報道での誤報を謝罪しなければならなかった。

リニアでの視聴者数が安定しているとはいえ、CBSは『60ミニッツ』のデジタルブランド構築にも力を入れており、昨年はTikTokとInstagramのフォロワー数がいずれも100万人を超えた。YouTubeでの『60ミニッツ』視聴も22年から23年で倍増。「主要年齢層の視聴者が増えた証だ」とオーウェンズ プロデューサー。

そして5月、CBSは「CBSニュース」と『60ミニッツ』のために新たな医療・ヘルス・ウエルネスチームを編成したと発表した。これらのトピックは世代を超えて視聴者ニーズが高いためで、AIや気候変動についても今後、重点を置いていくという。常に視聴者が欲するトピックを掘り下げることが調査報道番組としての長寿と人気の秘訣ということだろう。

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最後に、ニュース番組で『60ミニッツ』に次いで平均視聴者数で2位につける『ABC World News Tonight』(写真㊤/同番組の公式ウェブサイトより)も長年安定した視聴者数を得ている。しかも放送開始は『60ミニッツ』より20年も早い1948年で、『60ミニッツ』が週1回の放送であるのに対し、こちらは毎日の放送だ。ここ数年、800万人以上の視聴者数をキープし続けていることは業界でも高く評価されている。

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