米NY州、地元報道機関の支援で税制優遇 25年から

編集広報部

米ニューヨーク州の上院議会は4月末、地元の新聞や放送局を支援するための法案を可決した。州内の報道機関に2025年から3年にわたって9,000万ドル(年間3,000万ドル)の税額を控除する。キャシー・ホークル州知事の署名を待って正式に州法となる。米国では初めてともいえる大規模なローカルメディア支援・保護措置とあって、連邦レベルでのローカルメディア支援法のひな型になりうると米各メディアは報じている。

今回の税額控除措置(New York State Local News Employment Credit)は各媒体が記者を継続的に雇用できるようにするとともに、新規雇用を促すためのもの。社員記者1人の年間給与(最高5万㌦)に対して50%が控除の対象となる。1媒体が受けられる最高控除額は年間30万㌦。対象は新聞、雑誌、テレビ、ラジオと媒体を問わないが、株式公開している媒体は対象外となる。

年間予算3,000万㌦の内訳は社員100人未満の媒体に延べ1,300万㌦、社員100人以上の媒体にも同じく延べ1,300万㌦、残りの400万㌦はあらゆる規模の媒体に対して記者の新規雇用支援に充てられる。

全米新聞労働組合(NewsGuild-CWA)のジョン・シュルース代表は「米国史上初めての歴史的な法律だ」と絶賛。超党派のNPO「ローカルニュース再建連合」(Rebuild Local News Coalition)は声明を発表し、中小規模の媒体に対して公平に予算が充当されていることを称えている。税額控除は、政府からの助成金によって地元の報道機関が不利益を被るような力学が生じにくいという見方もある。

連邦レベルでは、大手IT企業に対する既存メディアの競争力を維持するための法案「ジャーナリズム競争・保護法案」(Journalism Competition and Preservation Act:JCPA)」 が23年6月上院の司法委員会を通過しているが、上院・下院での採決にまでは至っていない。今回のニューヨーク州の措置の連邦版とも言える超党派による法案「Community News and Small Business Support Act」も昨年夏、議会に提出されているが、まだ採決に至っていない。

こうしたこともあり、州レベルでの模索が各地で進められている。ワシントンD.C.市議会には23年10月、法案「Local News Funding Act」が提出された。年間1,100万㌦の予算を組み、住民が好きな媒体に寄付できるようにするというもの。ニューメキシコ州でも23年春、ニューメキシコ大学が運営するメディア・インターンシップ・プログラムに年間12万5,000㌦の予算が組まれた。カリフォルニア州議会は、情報が不足している地域での取材を支援するカリフォルニア大学バークレー校ジャーナリズム大学院のプログラムに2,500万㌦を支援する法案が通過。ニュージャージー州でも18年、ローカルニュース支援の市民情報コンソーシアムに500万㌦を給付する法案が議会を通過している。

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