2023年春のローカルラジオ新番組 新たな喋り手による遊び心と絶妙な距離感

やきそばかおる
2023年春のローカルラジオ新番組 新たな喋り手による遊び心と絶妙な距離感

今春の改編も昨年春と同様に新しいパーソナリティが務める帯のワイド番組やユニークな企画の番組が目立った。まずは新たなパーソナリティによるワイド番組から紹介する。在京局では、俳優・文筆家・電線愛好家として活動する石山蓮華をメインに迎えたTBSラジオのワイド番組『こねくと』(月―木、13・00―15・30)がスタート。穏やかで楽しいトークには、曜日替わりのパートナー(菅良太郎〔パンサー〕、でか美ちゃん、飯塚悟志、土屋礼央)おのおのの特徴もよく現れている。リスナーの参加欲もほどよく刺激して内容に広がりをみせている。リスナーが推薦する同局のポッドキャストを紹介するコーナーもマニアックな視線が効いていて、他の回も聴きたくなる。石山はモノの見方がユニークで文章も面白い。今後の展開に注目だ。

青森のRABラジオは平日の午前と午後、日曜午後のワイド番組を一新。『朝わい!くりっぷ』(月―金、7・00―11・00)、『らじすく!エア』(月―金、11・55―16・00)、『らじ丸にっち!』(日、12・00―15・00)が始まった。『らじすく!エア』は地元で活躍するミュージシャンと同局のアナウンサーが曜日替わりでタッグを組む。月曜は同局の人気バラエティ『土曜はDON』などにも出演している盛合諒と筋野裕子アナウンサー。火曜の古屋敷裕大は八戸のコミュニティFM「BeFM」にも出演。猪股南アナウンサーとのコンビは、のんびりした兄としっかりした妹の会話のようで微笑ましい。水曜の坂本サトルは春まで放送されていた『GO!GO!らじ丸』から続投。パートナーは猪股南アナ。ラジオカーリポートの成田洋明とのやりとりも絶妙だ。木曜は同局でもおなじみ、注目の民謡歌手かすみと盛り上げ上手な吉﨑ちひろアナウンサー。金曜の多田慎也は嵐やAKB48、ももいろクローバーZにも楽曲提供した経歴があり、弘前市を拠点に活動するりんご娘のプロデュースも務めている。パートナーはりんご娘などを擁するRINGO MUSICファンのこちらも吉﨑ちひろアナ。午後のワイド番組に新しい風を吹かせつつ、地元の話題にもしっかりと触れており、そのバランスがとても良い。

CRT栃木放送は午後のワイド番組を『アクセント』から『ミキシング!』(月―木、13・00―19・00)にバトンタッチ。6時間にわたる大型番組だ。なかでも注目は木曜の松井里恵アナウンサー&つぶやきシローの同年代コンビ。同局でおなじみの松井アナに、つぶやきシローのぼやき、「あるある」を軸にしたコメントが効いている。オープニングからつぶやきシローが気になったことを彼ならではの視点から話す。地元の話題に関するゲストを招いた時も、魅力を引き出すことに長けている。松井アナへのツッコミも楽しい(なお、つぶやきシローの出演は17時まで)。

ほかにFM山形では夕方ワイド『WAVE4 yamagata EXPRESS』(月―木、17・00―18・00)と月曜にシンガー&ソングライターのティーナ・カリーナを起用した『WAVE4 yamagata music』(月―水、18・10―18・55)、SBSラジオ(静岡)では地元で活躍する山田門努の自身初となる帯ワイド『ゴゴボラケ』(月―木、13・00―16・00)、RSKラジオ(岡山)では『天神ワイド 朝』(月―金、7・00―12・00)、FM鹿児島では夕方ワイド『μ Have FUN!!!』(月―木、17・00―19・00)などもスタートした。

bayfm(千葉)でかなりぶっ飛んだ番組『ロバート秋山の 俺のメモ帳!on tuesday』(火、25・00―25・27)が始まった。こちらは番組スタートが明かされた時から話題になっていた。bayfmが大好きで道路交通情報のメロディに勝手に歌詞を付けたり、ラジオの効果音で遊んだり、秋山が日常生活で気になることを書いたメモ帳をもとに重箱の隅をつつくようなトークを展開。その自由度はラジオ界においてトップクラス。ラジオファンのみならず、ラジオ関係者や芸人にもこの番組のファンが多い。

同じく芸人がメインパーソナリティを務めるのが『アインシュタイン灰春ナイト』(大阪・ABCラジオ/月、25・30―26・00)も魅力的だ。さまざまな人の悩みに、アインシュタインの稲田・河井をメインに、20代の牧野真莉愛(モーニング娘。)、30代の稲田、40代 河井、50代 とこわか吾郎(実はABCテレビ社員)と4つの世代のメンバーが向き合う。開始当初は学生からの相談がメインだったが、最近は幅広い内容を受け付けている。それぞれに通ってきた道が違うため、お互いのアドバイスやエピソードに驚いたり感心したりで30分があっという間だ。世代間交流の楽しさも気づかせてくれる。冗談とアドバイスのバランスも絶妙。


新番組といえばここ数年、若手のパーソナリティが続々と登場している福岡にも注目だ。なかでもラジオDJのコウズマユウタは音楽に関する知識の豊富さと心を揺さぶるポップなトークが好評で、レギュラー番組が徐々に増加。今や3つのラジオ局で週に20時間以上喋っている。今春もKBCラジオ(福岡)で4時間の音楽番組『KBC MUSIC PROGRAM "FUZZ"』 (月、17・55―21・55)がスタート。坂口カンナとタッグを組んだ。ミュージシャンからの信頼が厚い同局の『ドォーモ×ラジオ』(金、24・00―25・00)のチームが手がけている番組だけに今後の展開が楽しみだ。また同局では若手パーソナリティを中心にした賑やかな夕方ワイド『ハッピーアワー』(月―金、16・00―17・55)もスタートした。

同じく福岡のRKBラジオ『#キューパレ 服部さやかのシュンすぎ』(金、21・00―24・00)の服部さやかにも注目したい。もともとナイターオフ限定の番組だったが、聴いているほうがヒヤヒヤするほど展開の読めない破天荒ぶりが面白く、今春1時間拡大する形で金曜の夜の3時間ワイドに昇格した。ディレクターを務めるDJ Mobyの構成と演出も秀逸だ。毎回、本音と遊び心満載の番組を作り上げていく。彼は今春スタートした同じRKBの『シティポップ・ナイト』(日、23・00―23・30)でDJも務めており、演者と裏方の両面から複数の番組で活躍している。

FM FUKUOKAでは若手の愛智望美アナウンサーが立案した学生向けの番組『ナカニワスタジオ』(水、21・30―21・55)がスタート。愛智アナは『SCHOOL OF LOCK!』(TOKYO FM)を熱烈に聴いていたことがきっかけでラジオ業界を志したという。「今度は私が福岡の10代に向けた番組を作ってラジオに恩返しをしたい」と企画。今春、その願いがかなった。早速、県内の中学・高校を訪問しては10代の生の声を聞きつつ、ラジオの楽しさを伝えている。

沖縄のRBCiラジオ(琉球放送)では『ジ・アナウンサーズ』(月―木、22・00―23・00)を放送。同局のアナウンサーが日替わりで、好きなテーマで番組を放送している。週に4回、それぞれ60分の放送は、やりたい企画があるアナウンサーにとっても、同局のラジオファンにとっても魅力的だ。ある回は若手の鎌田宏夢アナウンサーがドラマ『古畑任三郎』について熱く語ったり、またある回は與那嶺啓アナウンサーが「あの会社のテレビCMソング特集」を放送。昨年同局に入社したばかりの本行慶子アナウンサーはお弁当や本について語る番組を放送した。アナウンサーとの距離感をグッと縮める番組だ。

同局はアナウンサーやパーソナリティ同士の交流が活発で、いろいろな番組で他のアナウンサーやパーソナリティの話題がよくあがる。新人のアナウンサーが新しい番組を担当してもファンがつきやすい。全国のラジオ・テレビ兼営局に務めるアナウンサーのなかには、ラジオを担当したくてもなかなかその機会がないという声も聞く。この番組はそんなアナウンサーの思いをかなえるほか、同局のファンをしっかりとつかんでいる。

最後に異例の番組を紹介したい。広島FMの『ウエスタン・リーグ カープ応援中継』だ。同局は秋までに山口県の由宇練習場で開催される広島カープのウエスタン・リーグの中継のうち、9試合を中継する(試合予定日の11・30―13・00、13・30―14・55、途中中断あり)。しかも広島の民放テレビ4局(中国放送、広島テレビ、広島ホームテレビ、テレビ新広島)のアナウンサーがローテーションで実況中継する。全国的にみても非常に珍しい試みであり、他球団の地域の放送局からも注目されている。スタジオにはカープファン代表のゲストも迎えるほか、リスナーからのリクエストにこたえたり、クイズを出題する企画もある。新しいパーソナリティーと新しい試みの今後が楽しみである。

(敬称略)

最新記事