米連邦通信委員会(FCC)は1月21日、長く空文化していた地上波テレビの「イコールタイム・ルール(equal time rules、平等な時間ルール)」を遵守するよう求める指針を示した(冒頭画像=FCCのリリース)。
同ルールは米通信法315条に規定され、放送事業者に対して公職選挙の候補者すべてに平等な取り扱いを求めるもの。具体的には、免許を保有する放送局は候補者に放送枠を提供した場合、競合する立候補者にも同等の条件(時間、料金など)を提供しなければならない。ただし、①正規のニュース、②正規のニュースインタビュー、③正規のニュースドキュメンタリー、④正規のニュースイベント(政治大会、討論会など)の現場報道――は例外とされてきた。ところが、これまで「正規のニュース」「正規のニュースインタビュー」とみなされ、同ルールの例外となっていた娯楽性の高いトークショーにも候補者が出演する場合は厳格に適用するとの姿勢を明確にした。新たな規則を導入するのではなく、既存の規則を再確認するという建てつけだ。
指針には特定の番組名は名指しされていないが、深夜や昼間のトークショーがターゲットだと米メディアは報じている。ABCのジミー・キンメル、CBSのスティーブン・コルベア、NBCのセス・マイヤーズといった人気司会者を擁する番組をはじめ、ABCの昼のトークショー『The View』などが含まれるという。これらのトークショーに候補者が出演することを「例外」と当然視してきた放送業界に対して指針は「その前提は自明ではない」と明確に線を引き、番組側が例外扱いを望む場合、FCCに個別の判断を求める必要があるとしている。
今後、直接的な影響を受けるのはネットワーク本体ではなくローカル局だ。これらのトークショーは全国ネット向けに制作・放送されるが、各エリアごとに放送免許を保有する系列のローカル局が実際の規制対象となる。ネットワーク側とローカル局側の役割分担をめぐる緊張関係は以前から指摘されてきたが、今回の指針でさらに緊張が増す可能性もある。なお、同ルールは地上波テレビに限られケーブルテレビや配信サービスは含まれない。
こうした背景には、FCCのブレンダン・カー委員長の一貫した姿勢がある。同委員長は「地上波テレビ局は"公益基準(public interest standard)"に服する」と繰り返し主張し、番組内容が公益に反すると判断されれば、放送免許更新の審査に影響し得るとの考えを示してきた。2025年のジミー・キンメルの番組での発言を問題視し、ABC系列局の放送免許に言及するなど、政権批判を展開するトークショーへの圧力とも受け取られかねない行動を取ってきた(既報)。また、同年12月の上院商務科学運輸委員会の公聴会で「厳密に言えば、FCCは政権から独立した機関ではない」と発言し、民主党側から強い反発を招いている。
この指針は抵触した局に直ちに罰則を科す強制力は持たない。ただし、番組に候補者本人が出演し、特定候補への放送時間の提供と見なされると、対立候補者は法に基づいて平等な放送機会を請求できる。このため、選挙年に候補者を番組に招くこと自体を控えるといった放送局側の萎縮効果を生むのではないかとの指摘もある。局がこれに応じなければ、FCCへの苦情申し立てや審査の対象となる可能性がある。放送現場、とりわけローカル局にとって編集判断と規制対応のバランスが、これまで以上に難しい局面を迎えそうだ。
