「メディア王」ルパート・マードック氏が、自身が会長を務める米2大メディア企業ニューズ・コーポレーションとFOXコーポレーションの合併を検討していたが、1月24日(現地時間)、それを断念したと発表した。ニューズ・コーポレーションは「2社の株主にとって合併は最適ではないと判断した」との声明文を出している。昨年10月にマードック氏が合併案を提示して以来、2社はそれぞれに独立した委員会を組織し、合併によるメリット・デメリットを検討していた。
マードック氏は2013年、自身が保有するメディア企業を出版事業のニューズ・コーポレーションと、エンタメ・放送事業のFOXコーポレーションに分割した経緯があり、その際は「2つの事業は分けるべきだ」と主張していた。19年にFOXコーポレーションの娯楽部門(21世紀Foxなど)をディズニーに売却した後も、マードック氏の長男ラクラン・マードック氏が、「今後2社の合併はない」と株主らに明言していた。今回のマードック氏の動きは、合併によるコスト削減と、規模拡大による利益増、2社が所有する企業の連携による事業拡大などを視野に入れたもの。しかし、2社ともに株主が猛反対した結果、合併案はなくなったとニューヨーク・タイムズ紙ほかが伝えている。
株主の中には、合併が2社に平等な利益をもたらさないことを懸念する声が大きかったとされている。マードック氏が、自身の議決権支配率が高いFOXコーポレーション(約42%)を、ニューズ・コーポレーション(約39%)より重要視するのではないかといった不安の声も聞かれたという。
マードック氏は合併以外のオプションも検討しており、ニューズ・コーポレーションが所有する巨大な不動産事業の売却もその一つ。不動産サイトRealtor.comを運営するMove Inc.のCoStar Groupへの売却などが、現在検討されているという。