米ケーブルニュース局のFOX Newsは4月18日、投票機メーカーのドミニオン・ボーティング・システムズ社に7億8,750万ドル(1,060億円)を支払うことで和解したと発表した。ドミニオン社は2020年の米大統領選で一部の州に投票機などの投開票システムを供給していたが、FOXが同社に選挙不正の疑いがあるとの誤った報道を行ったとして名誉毀損で訴えていた。これまでメディアを相手取った名誉毀損訴訟とは比較にならない高額な和解金となった。
FOXはこの報道が虚偽だったことを認めており、和解はルパート・マードック会長をはじめ経営陣や司会者らが法廷で証言することを回避するためともみられている。一方、ニューヨーク・タイムズ紙は、この程度の和解金ではFOXの経営になんら支障を来さないだろうとも報じている。不測の事態に備えた保険への加入はもちろん、同グループは現金資産だけで40億ドルに上り、ケーブルネットワーク部門だけでも2022年に29億ドルを売り上げているからだ。
ただし、大統領選をめぐってFOX Newsはほかにも大型訴訟を抱えている。投票集計技術会社のスマートマティック社が企業体としてのFOX Newsだけでなく、そのアンカーや元アンカー数人を相手に27億ドルの損害賠償を求めており、ドミニオンのように示談に応じるつもりはないとも伝えられている。
和解決定から1週間後の4月24日、FOX Newsは看板キャスターのタッカー・カールソン氏を解雇したと発表した。カールソン氏は平日プライムタイムの人気番組『タッカー・カールソン・トゥナイト』のホストで、視聴者数は3大ケーブルニュース局で常にトップ。トランプ支持派にも大きな影響力を持っており、投票機メーカーに対する虚偽の報道を先導していた。解雇の理由は明らかではないが、米メディアはドミニオン訴訟との絡みに加え、残った類似訴訟を見越したダメージコントロールではないかとみている。カールソン氏をめぐっては職場内の女性差別で元プロデューサーが訴訟を提起している。