米Meta社は1月7日、米国内でのFacebook、Instagram、Threadsのファクトチェック機能を廃止すると発表した。過度な検閲を避け、"自由な表現"を尊重するためとしている。これまでMetaのプラットフォーム上の投稿をファクトチェックしていたのは企業団体International Fact-Checking Networkに所属する複数の企業。これらとの契約を更新せず、X(旧Twitter)に準じたユーザー主導の「コミュニティノート」モデルに置き換えるという。
発表したのは、1週間前にMetaの国際問題担当重役に就任したばかりのジョエル・カプラン氏。熱心な共和党員として知られ、かねて「Metaのプラットフォームは移民やゲイなどの話題に表現規制が厳しすぎる」と批判していた。7日にトランプ氏寄りのケーブルニュースチャンネル「FOXニュース」の番組『Fox & Friends』に出演したカプラン氏は「テレビで言えることなら米国議会でも言える。ならばFacebookやInstagramでも検閲を怖れることなく表現できるようにすべき」と話した。Metaのマーク・ザッカーバーグCEOによると、今後はテロ、幼児の性的虐待、麻薬、詐欺など明らかな犯罪行為を示唆する投稿以外は、表現を取り締まらない方針だという(冒頭画像=Metaのウェブサイトから)。
トランプ大統領の就任式を目前にしたタイミングでの発表に、各方面から「政治的圧力に屈した」と批判も。Metaは続いてDEI(Ⅾiversity, Equity and Inclusion=多様性や公平性を尊重し、誰もが受け入れられる包括的な組織や社会を実現しようとする取り組み)プログラムも廃止すると発表している。Metaはトランプ氏勝利の直後、就任式のための基金に100万㌦(約1億6,000万円)を寄付している。Apple、マイクロソフト、アルファベット、Amazonなど巨大IT企業も一斉に100万㌦を寄付しており、「テック業界を挙げての圧政回避手段であることは明らか」と米メディアは報じている。
Metaがファクトチェックを強化し始めたのは2016年。総選挙中にプラットフォーム上の偽・誤情報氾濫が激しく批判されたことへの対応策だった。21年1月6日の連邦議会議事堂襲撃事件の直後には、トランプ氏のFacebookアカウントを一時的に閉鎖するなど、その都度対応してきた。これらは偽・誤情報の拡散防止に一定の効果があったと評価されている。それだけに、デジタル監視機関Accountable Techの創設者ニコル・ギル代表は声明で「議事堂襲撃事件を起こす基盤を作ったヘイト、偽・誤情報、根拠のない陰謀説をプラットフォームで再び氾濫させることになり、いずれまた現実世界での暴力へと発展する」と警告している。
24年11月の選挙でトランプ氏が勝利して以降、Meta以外にも各種オンラインプラットフォームが偽・誤情報の取り締まり機能や、偏見に基づく投稿の規制などから手を引く傾向にあり、米メディアはこぞってデジタルの安全性を憂い、それが若者に与える悪影響を懸念している。