スポーツ中継のあり方で米連邦議会が公聴会 配信へのシフトで視聴者に不利益も

編集広報部

スポーツ中継をお茶の間で観戦する手段がリニア(地上波・ケーブル・BS)だけでなくストリーミング(配信)へと広がったことで、視聴者からは「見たい試合をどこで見ればいいのか/見られるのか」といった声が広がっている。こうしたなか、米連邦下院議会が1月31日に業界関係者を集めて公聴会を開いた。

米国では、ローカルスポーツを専門に中継するRSN(リージョナル・スポーツ・ネットワーク)のビジネスモデルに陰りがみられ、NFL(アメフト)、NHL(アイスホッケー)などのプロスポーツリーグは地元の視聴者に試合を届けるため、独自の配信サービスや地上波ローカルテレビ局との連携などを模索している。一方、試合中継がテレビで放送されず配信のみになるなど、視聴者は「リニアか配信か/リニアならどのチャンネルか/配信ならどのプラットフォームか」で混乱。有料配信サービスと契約していない視聴者は、見たくても見られない事態が生じている。

これが象徴的に顕在化されたのが、1月13日のNFLプレーオフ(ワイルドカードゲーム)の試合中継 だ。NBCUの配信サービス「ピーコック」が独占配信し、米国内のスポーツ生配信で史上最高の2,300万人という平均視聴者数を記録したものの、リニアでの生中継は対戦2チームの地元NBC系列局だけ。他の地域ではピーコックの有料契約者以外は試合を見ることができず、苦情が殺到した。このため、ニューヨーク州選出のパット・ライアン下院議員(民主党)がNFLとNBCスポーツに抗議するという一幕も。

下院のエネルギー商業小委員会(委員長=ボブ・ラッタ下院議員〔共和党、オハイオ州〕)が開いた今回の公聴会は「TV Timeout: Understanding Sports Media Rights(テレビ・タイムアウト:スポーツメディアの権利を理解する)」がテーマ。米メディアの報道によると、テレビ局のスポーツ部門幹部、有料テレビ事業者や有識者らを招き、議論はコードカットがスポーツ中継に及ぼす影響をはじめ、へき地でブロードバンド・インフラがいまだに不足している"デジタル格差"の問題やローカルテレビ局の経営課題、再送信同意料のあり方など多岐にわたったという。ストリーミング時代となり利便性や選択肢が増えたというポジティブな側面を認めつつ、その落とし穴として、視聴者が地元チームの試合を容易に見られなくなったり、複数のストリーミングサービスに加入しなければならない現状や課題があらためて浮き彫りになった。

スポーツ放送権料の高騰が既存メディアを脅かしていると指摘したのはフランク・パローン下院議員(民主党、ニュージャージー州)。「これまで無料で見られたスポーツ中継が地上波から消えつつある。国民にどのような影響があり、ローカル局や動画配信市場の将来にどんな意味を持つのかを検証すべき」と述べた。スポーツの生中継などを手がけるスクリプス・スポーツ社のブライアン・ローラー社長はコードカットの急激な増加や放送権料の上昇など、この10年間の急激な変化を説明。崩壊しつつあるRSN事業は逆に地上波テレビ局の存在価値を高め、配信事業者との競争力を高めていることを強調した。また、ローカルテレビ各局は地域住民に地元のニュースを提供する重要な役割を担っているが、それを経営面から支えているのがスポーツ中継であり、"ニュース砂漠"の問題とも関連してスポーツが中継がなくなることは局の存立を危うくすると訴える声もあった。

さらに、スポーツ中継以上に米ローカルテレビ局の経営基盤となっているのが再送信同意料収入だ。地上波放送を同時再送信するケーブルテレビやBSなどの多チャンネル放送事業者(MVPD)から支払われるものだが、配信サービスの普及でコードカットが加速し、近年は局と事業者間で再送信料交渉で紛糾するケースも後を絶たない。2023年にはディズニーとケーブル事業者スペクトラムの交渉決裂によるブラックアウトが記憶に新しい。NAB(全米放送事業者連盟)はかねてストリーミングサービスを従来のケーブル事業者と同様の扱いとし、ローカル各局が再送信交渉を直接できるような配信規制の見直しをFCC(米連邦通信委員会)や議会に求めており、そのための連合組織も結成されている。しかし、公聴会では米最大手の衛星放送事業者ディレクTVのロブ・スンCCOがこれに反対を表明。放送と配信の両事業者間でよりバランスのとれた方法を考えるべきと主張した。この問題はFCCでの審議もはかどっておらず、さらなる検討が急がれる。

このように、スポーツ中継を端緒に再送信同意のあり方にまで及んだ今回の公聴会。ちなみに、その1週間後の2月6日にFOX、ESPN、WBDの大手3社がスポーツに特化した配信プラットフォームの新設を発表 、10日後の2月10日はスーパーボウルのライブ視聴が史上最多 を記録するなど、スポーツと放送・配信をめぐる動きは日々刻々と変化しており、今後もまだまだ波乱がありそうだ。

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