英Ofcom 大手民放の広告規制緩和に向けたヒアリング開始

編集広報部

イギリスの放送や通信事業を規制監督するOfcom(放送通信庁)は、7月15日、放送局への広告規制を見直すためのヒアリングを行うと発表した。検討の対象となるのは、同国のチャンネル3(民放最大手のITVおよびSTV)やチャンネル4、チャンネル5など、公共性が高い放送サービスを提供しているPSB(公共サービス放送局)だ。

PSBはEPGの上位チャンネル配置などで優遇されている一方、番組編成やテレビ広告で「公共性を保つため」に商業放送局よりも厳しく規制されている。広告分野では、商業放送で認められている1時間枠内のCM時間は最大12分だが、PSBではプライムタイム(1823時)で最大8分、それ以外では7分までで、CM枠も一部を除き1回に3分50秒以内(商業放送局は無制限)と縛りがある。

Ofcomは今回のヒアリングにあたって、追加の規制は「視聴者が過剰な広告にさらされることなく、視聴体験の質を維持するための措置だ」と説明したうえで、人々の視聴スタイルが放送からネット配信やオンデマンド利用に移っていると指摘し、PSBに厳しいCM規制を課す必然性が薄れてきているとしている。またPSBの広告収入が2015年をピークに減り続けている点を懸念し、規制の撤廃がPSBの経営安定につながるかもしれないとの考えも示している。

民放最大手のITVは放送免許の更新時期が2年後に迫っており、Ofcomとの最近の協議でSTVやチャンネル5とともに、より踏み込んだ規制緩和を求めていたことが明らかになっている。Ofcomも次の免許期間(2534年)を踏まえて、今回のヒアリングがPSB広告規制見直しの好機と捉えているようだ。

同じ7月15日、チャンネル4が21年の年次報告書をリリースし、1億100万ポンドの税引き前黒字となり、「過去最高の財務実績」を記録したと明らかにした。総収入はパンデミック前(19年)の18%増となる12億ポンドと史上初の快挙となった。回復の最大要因はデジタル広告の伸びで、放送での広告収入の伸びを大きく上回った。チャンネル4の好業績は、同局を改革して民営化しようとする政府の動きにブレーキをかけそうだが、広告の規制緩和が実現されれば、経営はさらに安定するだろう。

ヒアリング期限は10月7日で、Ofcomは寄せられた意見や情報をもとに、追加規制の撤廃を進めるかどうかを検討するとのことだ。Ofcomは「アメリカの配信事業者とPSBとの競争を念頭におきつつ、視聴者の利益保護と伝統的な放送局の持続との間で正しいバランスを取る必要がある」との立場をとる。CMが増えるのを嫌がる視聴者に配慮して、プロダクトプレースメント(コンテンツの中に広告商品を取り込み、より自然に視聴者に訴求する手法)の規制緩和が検討される可能性もあるとの報道も出ている。

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