新型コロナウイルスのパンデミックが始まる以前の2019年末から今年5月末までの間に、全米で360以上の新聞が廃刊したことが、米ノースウエスタン大学メディルジャーナリズム学院が6月末に発表したリポートで明らかになった。1週間に2紙が廃刊しているペースだ。
多くの業界アナリストは、パンデミックにより広告が激減したことが廃刊のトレンドを加速させたと考えていたが、このレポートはそうではないことを示す内容だった。レポートの筆者ペネロペ・ミューズ・アベナシー同大ジャーナリズム客員教授は、「パンデミックがさらなる悪影響を与えるかと思われたが、そうはならなかった。パンデミックに関係なく、同じペースで2005年から廃刊が続いているという事実は脅威だ」とコメントしている。
レポートによると、2005年以降、全米で約2,500紙が廃刊されている。全米の全新聞媒体の4分の1ほどにあたる数だ。このままだと2025年には、2005年比で全体の3分の1が廃刊になるペースだとアベナシー教授は指摘する。
ローカル新聞が廃刊になるということは、その土地に住む人々が必要な情報を得られないということ。レポートはこうした地域を"ニュース砂漠"と表現している。全米人口の5分の1にあたる7,000万人がこの"ローカルニュース砂漠"、またはその予備軍エリア在住だ。これらの地域は経済的にも貧しいところが多く、地元新聞が廃刊になるとそれに代わるローカルニュース源は存在しない。現在、全米の約7%にあたる211の郡に地元紙がない状況だ。富裕な都市部との情報格差がますます拡大することが懸念される。
地元の印刷媒体またはデジタル情報源が乏しいエリアほど、選挙での投票率が低いというデータもある。アベナシー教授は、「ニュース砂漠の拡大は民主主義と社会の危機だ」と指摘している。
なお、同レポートは2016年に発表されて以来、今回で5回目となる。8,000以上の新聞とデジタルサイトを分析し、まとめた。