ネットフリックス映画 米3大映画館チェーンが一斉上映合意 1カ月後には配信開始

編集広報部

米3大映画館チェーンAMC、リーガルシネマ(Regal Cinemas)、シネマーク(Cinemark)はこのほど、ネットフリックスの映画『Glass Onion: A Knives Out Mystery』(邦題『ナイブズ・アウト:グラス・オニオン』)を、今年11月一斉に劇場上映することで合意した。感謝祭の連休期間(112329日)の1週間だけ全米約600館で上映、その1カ月後の1223日からネットフリックスでの配信が始まる。ネットフリックスの映画が、配信前に3大映画館チェーンで同時上映されるのは初めてのことで、全米でも話題を呼んでいる。

AMCの発表によると、子会社のオデオン・シネマグループ経由で、米国外市場でも同時期に上映される。

この映画は2019年のヒット作『Knives Out』(邦題『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』)の続編だ。いずれも脚本・監督はライアン・ジョンソン。ダニエル・クレイグが主役の探偵を演じるマーダーミステリーだ。

1作目は201911月の感謝祭期間に映画館上映された後、翌20年にネットフリックスで配信された。21年にはネットフリックスがこの映画の続編2本の製作・配信権を取得している。この時ネットフリックスは約4億ドルを支払って他社の追随を振り切ったと推測されているが、金額は公式発表されたものではない。この映画フランチャイズの著作権は、ジョンソン監督とプロデューサーのラム・バーグマンが共同所有する。

こうした経緯の下、今回はネットフリックスによる待望の第2弾。ジョンソン監督はかねてからネットフリックスに対し、このフランチャイズが配信だけでなく、世界中の映画館で大々的に公開されることを熱望していた。今回の3大映画館チェーンとの合意の喜びを「天にも昇る思いだ」と形容している。

ネットフリックスと映画館業界との長年にわたる軋轢を考えると、今回の合意は画期的と言える。ネットフリックスは19年にも、オリジナル映画『The Irishman』(邦題『アイリッシュマン』)をAMCとリーガルシネマでの上映契約を試みたが失敗している。この時は映画館側が最低60日間の独占上映期間を要求したのに対し、ネットフリックスは45日間を譲らなかった。

ところが今回は、映画館側がわずか1週間の独占上映期間に合意している。パンデミック前の19年比で、鑑賞チケットの売上が激減していることが背景にあり、映画館への客足も戻りつつある現在、短期間だろうとこれだけの話題作なら合意する価値ありと、映画館側が判断してのことだと米メディアは見ている。

同時にネットフリックスも、これまでのビジネスモデルを大幅に変える時期に来ていることも確か。広告入りプランの導入に加え、今後は投資家からの圧力もあり、今までのようにオリジナル映画を自前の配信サービスだけに閉じ込めておくこともできなくなってきているようだ。

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