民放連は1月22日、「違法アップロードコンテンツと広告に関する実態調査」の結果概要を発表した。「大手広告主」の広告が違法アップロードコンテンツに頻出している実態や、YouTubeの違法アップロードコンテンツ(違法コンテンツ)によって多額の広告費が流出している可能性が明らかになった。
本調査は、インターネット上のプラットフォームサービスなどに民放コンテンツが違法アップロードされている実態と、違法アップロードされた同コンテンツに大手広告主の広告が掲出されている実態を明らかにするため実施。2024年11月26日~12月25日の期間に、YouTubeとFacebook、TikTok、Xに加えて、一般的なウェブサイトを対象に調査を行った。
民放コンテンツの違法アップロードの実態調査は、YouTubeでは登録者数1.5万人以上のチャンネルを対象に行った。少なくとも54のチャンネルで民放コンテンツが違法アップロードされていることを確認。54チャンネルでの違法コンテンツは合計5,745件で、延べ再生回数は約17億回だった。1再生あたり1回の頻度で広告が表示されると仮定し、インプレッション単価を1円として推計すると17億円の広告費が流出していることになる。Facebook、TikTok、Xは、それぞれのサービスで違法アップロードを行っているアカウントを各300件抽出してカウント。違法コンテンツの再生回数は少なくとも、TikTokで延べ5億回、Facebookで延べ1,400万回、Xで延べ1億3,000万回に上った。
違法コンテンツとともに表示されていた広告主の総数は約460社で、このうち日本アドバタイザーズ協会(JAA)会員である「大手広告主」は84社だった。同会員以外の大企業や地方公共団体の広告も多数含まれていた。YouTube上では、190社の広告が違法コンテンツとともに表示され、このうち「大手広告主」は52社。Facebook、TikTok、Xでも同様の事例が多数確認された。また、違法コンテンツを掲載したウェブサイトや他サイトへの窓口となっているリーチサイトなどにおいても「大手広告主」の少なくとも44社の広告が表示されていた。
本調査は限られた期間・範囲での内容であることから結果について、「氷山の一角だ」と本橋春紀・民放連常務理事事務局長。「民間放送は広告ビジネスで費用をまかない取材・報道活動を行っており、違法コンテンツによって本来獲得できたかもしれない広告費が流出していることに強い危機感を持っている。総務省が作成しようとしている広告主がデジタル広告を出稿する際の注意点をまとめたガイドラインに期待したい」と述べた。
なお、民放連は1月22日に開催された、総務省の「デジタル空間における情報流通の諸課題への対処に関する検討会」の下部組織「デジタル広告ワーキンググループ」(主査:曽我部真裕・京都大学大学院法学研究科教授)第5回会合でのヒアリングにおいて、本調査結果の概要を含めた「民間放送から見たデジタル空間の広告に関する課題」(総務省ウェブサイトに遷移します)を説明した。