ルールが変わる!「ラジオCM素材搬入基準」改訂 2024年11月1日適用に向けポイントを解説

編集広報部
ルールが変わる!「ラジオCM素材搬入基準」改訂 2024年11月1日適用に向けポイントを解説

民放連ラジオ委員会は日本広告業協会ラジオ委員会と連携のうえ、「民放連・業協ラジオCM運行合同WG」を設置し、ラジオCM素材搬入基準を2023年11月に改訂しました。この基準の適用が2024年11月1日に迫っていることから、7月23日にはパンフレット「【お知らせ】2024年11月ラジオCM素材搬入基準が変わる」(リンクからダウンロードいただけます)を公表しました。同WGの主査で、基準の改訂作業にも携わったニッポン放送の松井敏之技術局放送技術部長(=冒頭写真)にポイントを伺いました。

なお、ラジオCM素材搬入基準は以下からご覧いただけます。
・現行基準 ラジオCM素材搬入基準【2020年1月改訂版】(リンクからダウンロードいただけます)
・新基準  ラジオCM素材搬入基準【2023年11月改訂版】(リンクからダウンロードいただけます) (2024年11月1日適用)

――初歩的な質問ですが、「ラジオCM素材搬入基準」はだれが守るルールなんでしょうか
名前のとおり、ラジオCMを制作して搬入するための基準です。広告会社や制作会社、一部放送局が制作する場合もあるので、「作る人のための」ルール。CM素材を放送局にスムーズに納めるために守ってもらいたい事項をまとめています。今回、そのルールを改訂し、「ラジオCM素材搬入基準【2023年11月改訂版】」として今年の11月1日に適用を開始することとしています。

――改訂の目的が、新基準の1ページ目に「リスナー・ファーストなラジオ放送とデジタル・オーディオ・プラットフォームとの統一化を実現するため」とありました
今回改訂する項目は大きく3つあります。1つ目がラウドネス規定の導入、2つ目がCM素材本編に無音部分を設定、3つ目が従来あった音声クレジットとレベル規正用信号を収録不要とし本編のみとすること――です。また3つ目の音声クレジットがなくなることを踏まえて、CM原稿に記載する項目を充実させ、推奨記載例を新基準に掲載しました。

スライド4.JPG<推奨される「ラジオCM原稿」参考様式(「ラジオCM素材搬入基準【2023年11月改訂版】」47ページより)>

――ラウドネス規定とは何でしょうか。
ラウドネス(人が感じる音の大きさを数値で表す"ものさし")規定は、ラジオ番組交換規準ではすでに導入されており、平均ラウドネス値が-24LKFS(±1dB)で統一されています。ラジオ番組交換規準は、正式名称を民放連技術規準R024「音声ファイルによる番組交換」といい、2022年11月に改正し、スタンダードなルールになっています。今回、CMでもラジオ番組交換規準と同じ値のラウドネス規定を導入することで、番組とCM、CMとCMの音の大きさがそろい、聴きやすい放送になると期待しています。これが目的の「リスナー・ファースト」につながる部分です。

――もう1つの目的「デジタル・オーディオ・プラットフォームとの統一化」はどうでしょうか
ラウドネス規定の導入はもちろん、ほかの2つの改訂項目はラジオCMだけのルールをなくし、デジタルプラットフォームと同じCMファイル構成にする意図があります。今までは、CMの作り手からすると、放送局に搬入するCMとデジタルプラットフォーム(radikoなど)に搬入するCMの2種類の異なる基準で制作する必要がありました。具体的には、放送局に搬入するときは、CM本編だけでなく、音声クレジットとレベル規正用信号も追加で収録してもらう必要がありました。ダブルスタンダードな状態になっていたんです。

ニッポン放送.jpg

<現行基準と新基準での音声ファイルの違い>

――そうするとデジタルプラットフォームと放送局のCMに関するルールは足並みがそろうのでしょうか。
「ラジオCM搬入基準」はあくまでも放送局にCMを搬入する基準です。しかし、radikoも加盟するデジタルプラットフォームの広告団体である日本インタラクティブ広告協会とは、CM素材はCM本編だけとして、無音部分を設定することを基本にしましょう、と新基準に沿った話し合いをしています。CMに関する制作基準は揃ってくると考えています。ただし、ラウドネス規定は、放送とデジタルプラットフォームとで値が異なり、これを統一することは難しいと考えています。

――改訂のポイントである無音部分ですが、どうして必要なのでしょうか。
音が連続しているとCMとCMの区切りが分からなくなってしまいます。CM素材に無音部分の設定がない現行基準を踏まえ、ニッポン放送では、聴きやすさを意識してCMの前後に0.1秒ずつ無音を追加設定しています。そうすることで、それぞれのCMが独立し聴きやすくなります。
また、radikoから配信するときに、放送局が差替え可としたCMを、radikoで別のCMに差し替えるradikoオーディオアドというサービスが提供されています。先ほど説明したニッポン放送の場合、放送だけ前後に差し込む0.1秒によってズレが生じています。無音部分の設定は、オーディオアドの今後の広がりのためにも、必要な準備だと考えています。

スライド5.JPG

<適用ロードマップ(「【お知らせ】2024年11月ラジオCM素材搬入基準が変わる」7ページより)>

――では実際いつから新しい基準で考えればいいのでしょうか
11月1日から制作するCM素材は、新基準が適用になります。現行基準で制作されたCM素材については1年間使用できますが、2025年11月(目途)以降は新基準で作り直し、再搬入をしてくださいとの案内です。

――「制作する」とは、どのタイミングだと理解すればいいのでしょうか
ラジオCMオンライン送稿システム「Radi Pos」では、アップロードされた素材の内容を確認し、搬入素材として確定する「検収」のタイミングで判断します。「検収」が10月31日より前であれば現行基準、11月1日以降は新基準という考え方です。

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<Radi Posでの新基準サポート予定(「【お知らせ】2024年11月ラジオCM素材搬入基準が変わる」5ページより)>

――新基準への移行にあわせてRadi Posでサポート機能がリリースされると聞きました
アップロードするCM素材の平均ラウドネスを規定値に調整する機能や、素材ファイルの切り出しといった機能が追加されます。実は、10月31日より前にCM素材の制作を考えている方は、現行基準でのCM素材を作成してもらうことになりますが、CM素材本編内の最初と最後に無音部分だけは先行して設定してもらうことで、11月1日以降にRadi Pos上で切り出し、補正することができ、新基準に適合した素材へと簡単に変更することができます。

――新基準への移行にあたり、放送局が注意すべきことを教えてください
音声クレジットがなくなることで、CM素材が搬入されたあとのチェック体制に変更がないか各社で確認する必要があります。今回の改訂でCM原稿の内容を充実させたので、まずはCM原稿と照合するなどCM素材の取り違えに一層注意する必要があります。また識別に必要なCM素材名などのデータが入った「CMチャンク情報」を機械的に読み込む設備を導入することも有効な手段だと思います。
オンライン搬入されるCMとは別に、放送局内には番宣など搬入基準外の素材も流通していますが、同じく放送される素材ですので、新基準と同じように作成することが望ましいと考えます。

――作り手である広告会社、制作会社へのポイントはありますか
まずは、搬入基準どおりに制作することへのご協力をお願いします。また、新たに設定されたCM本編の無音部分は、ぜひ今からでも組み込んだ編集をお勧めします。Radi Posでは追加機能を充実させますが、無音をあとから調整することはできないので、新基準への移行を見すえて意識してもらいたいポイントです。
また、2025年11月(目途)までは同じCM素材であっても、現行基準で継続使用する素材と新基準に対応した素材の2つが混在する過渡期になります。この期間は、広告会社・制作会社と放送局でコミュニケーションを取りながら、お互い気を付けてCM素材の搬入を行ってもらえればと思います。

――広告主に向けては何かありますか
新基準については、日本アドバタイザーズ協会にも説明をしました。今後は1つの素材で、放送局とデジタルプラットフォームの両方で使用できるので、利用の幅が広がるための改訂とご理解いただければ幸いです。

スライド2.JPG<解説いただいたニッポン放送・松井敏之さん>

11月1日の適用に向けて、ラジオCM素材を制作するポイントをしっかり解説してもらいました。
なお、「民放連・業協ラジオCM運行合同WG」では、「ラジオCM素材搬入基準【2023年11月改訂版】」とあわせて、パンフレットのほかにFAQを作成してます。こちらのページから、ぜひご確認ください。

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