TBSテレビが、人気ドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」の舞台を再現したレンタルスペース事業「逃げ恥スペース presented by TBS~私とみくりと平匡と」を、イベントスペースなどの貸し出しを行うスペースマーケット社と共同企画。世田谷区にある同スペースを記者が現地取材した。
閑静な住宅街に突如現れる白い建物。音楽スタジオの待合室を活用したというスペースは、ドラマのイメージにぴったりのフローリングの床と白い壁が印象的で、空間に流れるドラマのサウンドトラックも世界観を高める。そして、何より目に入るのは黄色いペーパーファンの数々。エンディングの「恋ダンス」を踊ったリビング風といえば、目に浮かぶ人も多いのでは。ドラマ同様の構図で写真や動画が撮れるよう、床には「みくり」と「平匡」、そしてカメラポジションの"バミリ"がされている。
TBSテレビからの要望を受け、スペースマーケットが自社に登録されている1万6,000ほどの物件の中から「逃げ恥」のイメージに沿う物件を提案。そのリサーチ力にも驚くが、なにより感銘を受けたのはTBSテレビ美術スタッフの空間デザインへのこだわりと高度な技術だ。ドラマを見ているだけでは気付かなかった細かなセットや小物まで間近で見ることができ、ドラマファンをわくわくさせる仕掛けが詰まっている。既存の物件に穴を開けることなく、ドラマで使用した家具・家電や小物、さらに物件に合わせて制作したという大きな棚などの巧みな配置により、「逃げ恥」の雰囲気を存分に感じることができる。本企画の立案と空間デザインを担当したTBSテレビデザインセンターの太田卓志氏は「家具の配置や全体の色味で『あのドラマだ!』と思ってもらえるよう、番組の印象的な部分を抽出することを意識した」と説明する。
<封筒は見栄えの良い角度で動かないよう糊付け。美術セットのこだわりがうかがえる>
サービスは7月22日からで、初回予約分が発売開始と同時に完売するほど好調な売れ行き。反響も良いという。スペースマーケット広報の吉田由梨氏によれば、利用は家族連れの誕生日会やドラマファンのオフ会、友人同士でのダンス撮影など多岐にわたる。キッチンには調理家電や食器が揃っており、食材を持ち込んで自由に調理可能。劇中に登場した瓦そばを作ったり、誕生日会に活用したとの声が聞かれた。中には、ドラマでの共演をきっかけに結婚した主演の2人にあやかり「逃げ恥スペース」でプロポーズをしたという人も。
2社の強みを最大限に活かした空間作りは、一見の価値あり。4時間パックで空間ごと貸し切ることができるため、人混みを避けたい昨今の利用にも適しているのでは。今回お話を聞いた担当者の2人は「テレビの空間デザインがビジネスとして成り立つ手応えを感じた」(太田氏)、「既存のコンテンツが持つ力は圧倒的。レンタルスペースとの相性が良い」(吉田氏)と企画の可能性を実感。今後は地方展開やドラマ以外の番組での共同企画にも取り組みたいと展望する。
<オプションサービスの「風見さんからもらったちょっと良い紅茶」>