米ディズニーとスポーツ配信プラットフォームの「FuboTV」は1月6日、それぞれが運営するvMVPD(配信によるテレビチャンネルのバンドルサービス)の「Hulu + Live TV」と「Fubo」を統合すると発表した(冒頭画像はディズニーのプレスリリースから)。統合後の新会社はディズニーが70%の株を保有し、「Fubo」のブランド名で運営される(ただし、ディズニーの主力サービスである「Hulu」本体は合併の対象に含まれていない)。これにより、米国内の契約者数は合計620万人と、YouTube TV(推計契約者数800万人)に次ぐ業界第2位のvMVPDサービスが誕生する。規制当局の認可が必要で、統合完了までには相応の時間を要する。統合後もHulu + Live TVとFuboは単独サービスとして引き続き運営され、ユーザーは別々に契約することも可能だという。Fuboがスポーツ専門であるのに対して、Hulu + Live TVはニュースからスポーツ、映画などのエンタメまで幅広いジャンルをカバーする。
また、今回の合意にはFuboがスポーツ特化型の新たな配信サービス「Venu Sports」(以下Venu)に提起していた訴訟を取り下げることも含まれ、ESPN(ディズニー)、FOX、ワーナー・ブラザーズ・ディスカバリー(WBD)が共同で進めていたVenu計画が再始動するとみられていた。しかし、直後の1月13日に3社がVenuの事業中止を発表するという急転直下の展開となった。
その背景にはFuboが訴訟を取り下げた直後、今度は衛星放送最大手Dishネットワークの親会社EchoStarがVenuの事業に懸念を表明し、裁判所に文書を提出したことも影響したとみられる。衛星放送DirecTVも同様の措置をとると発表したことから、3社の自信が一気に揺らいだとウォール・ストリート・ジャーナルは伝えている。「常に変化する市場でそれぞれが既存サービスに重点を置くことが最善と判断した」と3社は共同声明を発表した。
Hulu + Live TVとFubo統合の合意にはVenuへの訴訟取り下げ条件として、ディズニー、FOX、WBDがFuboに2億2,000万㌦(約332億円)を支払い、さらにディズニーは2026年内にFuboに1億4,500万㌦を長期融資することが含まれていた。しかし、結果的にVenuが中止となったため、これらは今後の交渉に委ねられるとみられる。
またこの合意で、Fuboはディズニーのスポーツ・放送ネットワーク群(ABC、ESPN、ESPN2、ESPNU、SECネットワーク、ACCネットワーク、ESPNEWS)と、配信のESPN+を含む新たなスキニーバンドル(限定された地上波テレビ局やケーブル局をネット上で再送信・配信するサービス)を提供できるようになる。ディズニーは同様のスキニーバンドルを提供する契約をDirecTVとも交わしている。これらのスポーツに特化したサービスの提供は、ある意味でVenuが当初目指したもの。業界全体がこうした方向に動きつつあるなか、Venuを強引にスタートさせる意味を3社が問い直し始めたことも、中止の理由とみられる。
Venu Sportsの構想が発表されたのは2024年2月。同年夏には月額43㌦でサービスを開始すると発表していた。しかし、Fuboの訴えが認められ開始直前に裁判所から差し止められて以降、棚上げ状態だった計画は1年を待たずに白紙撤回となった。