新スポーツ配信サービス「Venu Sports」に司法が"待った"  サービス開始は来年以降に持ち越し

編集広報部
新スポーツ配信サービス「Venu Sports」に司法が"待った"  サービス開始は来年以降に持ち越し

FOX、ESPN(ディズニー)、ワーナーブラザーズ・ディスカバリー(WBD)の米大手3社合弁によるスポーツ配信サービス「Venu Sports」は8月1日、当初の予定より早く8月23日にサービスを開始すると発表した。ところがニューヨーク市マンハッタン米連邦地裁が8月16日、これに「待った」をかけた。スポーツ配信専門のvMVPD「Fubo TV」が反トラスト法に抵触するとしてサービスの中止を求めて3社を訴えていたが、8月に入って法廷で公聴会が開かれ、Fubo TVの主張が認められた。これにより、Venu Sportsのサービス開始は2025年またはそれ以降に延期される。

公聴会では大手3社を合わせたスポーツ中継権の業界でのシェアがあまりに大きいことが議論の中心になった。Venu Sportsに含まれるスポーツチャンネルは、3社合計で14(ディズニー=ESPN、ESPN2、ESPNU、SECN、ACCN、ESPNEWS、ABC/FOX=FOX、FS1、FS2、BTN/WBD=TNT、TBS、truTV)。加えてディズニーの配信サービスESPN+も含まれる。結果、3社で全米スポーツの60%をコントロールすることになる。特にNFL、NBA、MLB、NHL、大学アメフトに関してはVenu Sportsのシェアは75%に達し、NFL、NBA、MLB、NHLのプレイオフに至っては98%のシェアになることなどが糾弾された。

Venu Sportsは計画発表のあった今年2月から業界で猛反対の声が上がっており、FuboTVが発表直後に3社を提訴。メディア企業各社もそれに賛同する声明を上げていた(関連記事はこちら)。米連邦上院議員のエリザベス・ウォーレン、バーニー・サンダース、ホアキン・カストロの3氏もVenu Sportsの反トラスト法抵触と、配信サービス料の大幅値上げにつながる可能性を訴え、司法省と連邦通信委員会(FCC)に精査するよう求めていた。

Venu Sportsは8月1日に月額契約料43㌦で8月23日から米国内でサービスを開始すると発表。秋のNFL2024~25年シーズン開始前に専用のアプリを立ち上げる計画だった。

米オンラインメディア「IndieWire」 によると、ディズニーが裁判所に提出していた書類に「Venu Sportsは9年後(2033年)にサービスを閉鎖する」という一文があったことも注目を集めた。まだ始まってもいないサービスについて終了時期まで明記するのは異例のこと。米メディアは、これをFuboTVの訴訟対策とみていた。この一文を付け加えることで「Venu Sportsはあくまでも臨時のサービス」という認識を打ち立て、訴訟から逃げ切ろうという狙いがあったという。結果的には、サービス開始直前に法廷から中止判決が下った。

今回の判決を受け、Fubo TVのデヴィッド・ガンドラーCEO・共同創設者氏は「この判決で業界各社が競争力を失うことなく、消費者の選択肢も守られる」と話している。

一方のFOX、ESPN、WBDは共同声明を発表。「Fuboの主張は事実と異なり、法的に(Venu Sportsの)サービス中止を可能とする理由づけができていない。Venu Sportsは業界内の競争を促し、既存のサービスでカバーされていない消費者層に選択肢を与えるためのもの」として控訴する意向だ。

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