放送局は、子どもたちに番組を見てもらうために何をすべきか。子どもたちのために何ができるのか――。「シリーズ"子どもたちのために"」では、放送局の取り組みの紹介に加え、有識者による論考なども掲載します(まとめページはこちら)。第3回では、琉球放送(RBC)が実施する「応援!18の旅立ち チャリティーキャンペーン」について、キャンペーン事務局の皆さまにご紹介いただきました。(編集広報部)
RBC「応援!18の旅立ち チャリティーキャンペーン」とは
高校を卒業する18歳の春、児童養護施設や里親家庭で暮らす多くの子どもたちは施設を離れ、自立へと踏み出します。就職や進学、転居など、新たな生活を始めるために多額の支出が重なり、資金の問題から学業を途中で断念したり、生活が成り立たなくなったりする場合も少なくありません。
琉球放送(RBC)は、巣立ちを控える沖縄県内の子どもたちを支援するため、2014年から「応援!18の旅立ちチャリティーキャンペーン」を実施しています。放送局ができることを思案し、募金活動、チャリティーカレンダーの販売(=冒頭写真)、当事者への取材など番組での特集も続けています。2024年の児童福祉法改正により公的支援は拡充されたものの、多くの子どもたちが依然として18歳という節目で自立を迫られており、継続的な支援の必要性は変わりません。

<これまでの特集の一部はウェブサイトで視聴できる>
この取り組みのこれまでの歩みや、これからの展望について、皆さまに広く知っていただきたく、キャンペーン事務局より、狩俣倫太郎アナウンス室長、仲田紀久子キャスター(=冒頭写真)、宮國宏美ラジオディレクターの3人によるメッセージを掲載いたします。
輪の広がりを実感する12年 【狩俣 倫太郎(アナウンス室長)】
琉球放送が創立60周年を迎えた2014年、「社として何か社会に貢献できることはないか」とラジオ局内で検討したのが、このキャンペーンの始まりでした。当時、県内の児童養護施設を卒業する18歳は30人おり、一人当たり10万円を目標にチャリティーを開始しました。
手探りで始めた番組MCやアナウンサーが登場するチャリティーカレンダーの制作と募金の呼びかけ。初年度は目標額に届かず、会社が不足分を補塡して事業を成立させました。ラジオ中心の取り組みから、年を重ねるにつれテレビや他部署の協力も得て、今回で12回目を迎えます。
チャリティーカレンダーという形であれば、実用性があり、取り組みの意義を広くご理解いただけると考えました。ご出演いただいているタレントの方々は、趣旨をご理解くださり、無償のボランティアとして協力してくれています。毎年、番組ごとに工夫を凝らしたカレンダーを制作し、今年も全社一丸となって子どもたちを思い、作りました。
取り組みを知っていただくにつれ、カレンダーの購入数や募金額は年々増えていきました。チャリティーとして定着してきたことを実感しています。寄付の受付場所も徐々に増え、現在では県内3行の銀行にもご協力をいただいています。当初は会社の補塡が必要でしたが、支援額は一人当たり10万円から、15万円、18万円、20万円、そして30万円へと増額することができました。企業や慈善団体からのご寄付もあり、「子どもたちのために何かしたい」という人々の輪の広がりを感じています。
今後、さらに贈呈金額が増えることを願っています。開始当初は「18歳に10万円」という金額が妥当なのか悩んだ時期もありましたが、進学や新生活のための費用となると決して十分な金額ではなく、決して贅沢な使い方をしている子どもはいないと信じています。子どもたちが健やかに成長し、将来の夢や希望を広げていってくれることを心から願っています。

<カレンダーの先行販売に立ちあう狩俣倫太郎さん>
このキャンペーンを伝えること【仲田 紀久子(キャスター)】
アナウンサーとして毎年番組やラジオまつりなど何らかの形でキャンペーンに関わってきました。ニュースキャスターとしては、キャンペーンをニュースとして伝える役割も担ってきました。
児童養護施設の卒業生や、この取り組みを知った方々が取材に協力してくださるケースも徐々に増えてきました。施設側との交流も増え、子どもたちの生の声を直接聞くことで、この取り組みに実感を持ち、私自身も子どもたちから力をもらっていると感じています。
それぞれの道で仕事をしていたり、結婚をしていたりする卒業生もいます。その節目節目で、連絡をくれる人もいます。このキャンペーン開始時に18歳だった卒業生が30歳になり、結婚の報告をしてくれました。これは、お金だけではない社会とのつながりを実感する瞬間でした。
取材の際、子どもたちが育った環境や現状にどこまで踏み込むべきか、その距離感に思い悩むこともあります。「かわいそうだと思われたくない」という強い気持ちを持つ方もいれば、「この環境で頑張っている姿を、同じ境遇の後輩に見せたい」という思いで取材に応じてくださる方もいます。さまざまな背景がある中で、ご本人が「どのように発信したいのか」という気持ちを尊重し、応援したいという思いとともに、表現の仕方には細心の配慮をして伝えていく必要があります。
沖縄が抱える貧困問題、経済格差、家庭内暴力など、根底にある社会的な課題は、キャンペーン開始の12年前と変わらず存在しています。自分の置かれた環境を嘆くのではなく、プラスに捉え、「今いる場所で何ができるか」を考えようとする子どもたちの姿勢からは、私たちも学ばせてもらうことが多くあります。
このキャンペーンを継続せざるを得ない状況、毎年変わらず行っている現状を残念に感じることもありますが、子どもたちを支援するという目標を諦めずに、できる支援を続けていきたいと考えています。

<カレンダー先行販売についてのリポート リスナーもかけつけた>
子どもたちと関わること【宮國宏美ラジオディレクター】
事務局では、児童養護施設や里親家庭の方々との窓口業務、カレンダーの制作、キャンペーンの告知、施設・子どもたちへの取材などを担っています。目標金額の達成に不安を感じることもありますが、番組制作や子どもたちとの関わりの中で、支援の輪が年々広がっていることを実感しています。
連絡先を知っている数人の卒園した子どもたちに、時々、「元気?」「ちゃんと食べている?」など、何気ないメッセージを送っています。「風邪ひいた」「疲れた」といった短い返信の中にも、一人ひとりが社会の中で精一杯生活している様子が想像できます。また、卒園後、施設の方との会話からも、順調に勉学・仕事に励む子、途中で挫折し施設に戻ってくる子、新たな夢を見つけてリスタートを切る子、それぞれの歩みを知ることができます。
取材を通して、子どもたち一人ひとりの歩みを、全面的に支援する児童養護施設・里親家庭・子どもたちの未来をサポートしている団体の皆さまの活動を知ることもでき、その活動に頭が下がるとともに、このキャンペーンが「お金だけを渡す関係になっていないだろうか」と、熟考する機会もいただいています。
私たちが行っているキャンペーンは、毎年、たくさんの方々にご賛同いただき、多くのご協力のもと続けてまいりました。子どもたちに贈呈できる金額も年々増加しています。子どもたちの沖縄県外への進学・就職率も年々増加し、ありがたいことに、その一端を担えているというお言葉を施設の方から頂戴しました。
県外への就職・進学は、渡航費や新生活の準備だけで多額のお金を要します。そのため諦めてしまう、あるいはそもそも選択肢として持てなかった子どもたちが、海を越えた場所へ想いを馳せ、実現させている。その言葉を聞いたとき、涙が出るほどうれしかったのを覚えています。
今年、県内の里親家庭、児童養護施設から旅立つのは33人です。これからも、この取り組みの意義を確認しながら、さまざまな課題を取材し、子どもたちが将来の夢に向かって一歩を踏み出す一助になれるよう、支援を続けていけたらと思います。
<RBCラジオでも取り上げた。写真は與那嶺啓アナウンサー>
今年度もキャンペーンは実施中
これまでの11年間で、私たちは合計347人の子どもたちを支援してまいりました。
そして、来年2026年3月には、新たに33人の子どもたちが施設や里親家庭から巣立つ予定です。彼らが希望に満ちた未来を切り開けるよう願い、今年度も2026年2月15日(日)までこのキャンペーンを展開しています。
お問い合わせ:RBC応援18の旅立ちチャリティーキャンペーン事務局
ご支援:
口座名「応援18の旅立ちチャリティーキャンペーン事務局」
■沖縄銀行 本店 (普通)2621997
■琉球銀行 本店 (普通)1297244
■沖縄海邦銀行 本店 (普通)921129
詳細はウェブサイトからご確認いただけます。
琉球放送 執行役員アナウンス室長
狩俣倫太郎(かりまた・りんたろう)
「MUSIC SHOWER Plus+」木担当
座右の銘:正しい事より美しい事
最近のびっくり:ヘチマを食べることができました
琉球放送 キャスター、アナウンサー
仲田紀久子(なかだ・きくこ)
「RBC NEWS Link 」月・火担当
座右の銘:向き不向きより前向き
最近の幸せ:子どもの寝顔を見ること
琉球放送 ラジオディレクター
宮國宏美(みやくに・ひろみ)
朝の情報番組「アップ!!」を担当
座右の銘:One for all, All for one
最近の気づき:己を深く見つめる事の大切さ
《聞き手・編集》
琉球放送 総務部、人事部、コーポレート・コミュニケーション室
國吉やよい(くによし・やよい)
座右の銘:やるならやる
最近の感動:今年最後で最初の夏フェス
