琉球放送・飯島將太さん 「ラジオとテレビが融合」兼営局にしかできないコンテンツ『ラジオの神回テレビで語る』【制作ノートから】⑤

飯島 將太
琉球放送・飯島將太さん 「ラジオとテレビが融合」兼営局にしかできないコンテンツ『ラジオの神回テレビで語る』【制作ノートから】⑤

作り手の思いに触れ、番組の魅力を違った角度から楽しむシリーズ企画「制作ノートから」。第5回は琉球放送の飯島將太さんに、ラジオとテレビが融合した番組『ラジオの神回テレビで語る』(琉球放送で毎週金曜日24:43~25:13放送、TVerでも配信中)について執筆いただきました。(編集広報部)


「ラジオの面白さをテレビで再発見するという新しい楽しみ方を提案することに成功している」と、うれしい言葉を放送文化基金賞の審査委員からいただきました。『ラジオの神回テレビで語る』がなぜ生まれたのか、それはラジオ・テレビ兼営局(ラテ兼営局)にできることは何か? と模索したことが始まりでした。

『ラジオの神回テレビで語る』は、ラジオとテレビが融合した番組です。琉球放送(RBCiラジオ)で放送した過去の番組からリスナーや番組スタッフが印象に残った回、面白かった回などを推薦した音源を、番組パーソナリティと一緒に聞いて裏話や後日談などを語っていきます。

社内アンケートの回答から

制作のきっかけは、当社(RBC)が2024年に創立70年を迎えるにあたり行われた社内アンケートに書かれたコメントでした。アンケートの設問は「RBCの強みは?」「RBCの弱みは?」というもので、強みは「ラテ兼営局」という回答が多く見られた一方で、弱みも「ラテ兼営局の良さを活かせてない」というものでした。

制作部門でディレクターをしていた私は"ラテ兼営局にしかできないコンテンツ"であり、低コストかつ低労力で作れるレギュラー番組を目標に企画を考え始めました。レギュラーにこだわった理由は、単発番組ではなく持続的に"ラテ兼営局にしかできないコンテンツ"を届けることが本当の意味での強みになると思ったからです。低コストかつ低労力にこだわったのは、どのローカル局でも同じ悩みを抱えているかもしれませんが、人員と予算の問題からです。

ただ自分に課したハードルの高さからなのか、なかなか良いアイデアが浮かびません。これまでラテ連動した企画と言えば、テレビのコンテンツをラジオに落とし込む方法でした。例えば歌番組などをラジオとテレビで同時に放送するといった手法や、テレビ番組と同じMCをパーソナリティに据えた連動番組などが挙げられます。しかし、このパターンでは手間のかかったテレビ番組を作ったうえで、ラジオ番組を作る必要があり、コストも労力も目標からかけ離れた内容になってしまいます。

初めての視聴者もラジオリスナーも楽しめるように

通常業務をこなしながら頭の片隅にはこのことがあり、もやもやとした日々を過ごしていましたが、ある日突然、「テレビをラジオに落とし込むのではなく、ラジオをテレビに落とし込めばいいんだ」と解決策が降りてきました。その考えをもとに浮かんだのが、「ラジオの面白い音源を切り取って、テレビ番組にすること」でした。番組の柱ができれば、後はどういう肉付けをするかです。番組のコンセプトとして、「ラジオを聞いたことがない人も面白い、ラジオを聞いている人はもっと面白い」を意識して作ることにしました。まず誰もが見やすい作りとして、ラジオのトークをテロップで可視化しました。

さらに聞き手役のMCをラジオから遠い存在のアナウンサーに任せることで、取り上げるラジオ番組に初めて触れる視聴者と同じ目線で番組を進行してもらう工夫をしました。その一方でラジオリスナーにも満足してもらえるように、パーソナリティが裏話や後日談を話すスタイルや、パーソナリティのワイプの顔を全員見せることなどで、どちらも楽しめるフォーマットを構築しました。

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<神回 お風呂場からの緊迫電話中継>

ちなみに、ラジオを映像化するのはこの番組が初めてではありません。ある番組の企画のひとつとして、ラジオ好き芸人や有名人が好きなラジオ番組を紹介する放送回や、ラジオの音声を切り抜いてテロップを載せるというYouTubeコンテンツなどがあります。ただラテ兼営局がこうした形で放送しているところはどこにもなく、レギュラーのテレビ番組に限ればおそらく日本で初めてになれるかもしれないと思い、自分自身でも「これが形になったらすごいことになるかも」と興奮したのを覚えています。

企画書だけでは伝わらない、プロトタイプを制作
その結果、年末特番を経てレギュラー化

この企画を思いついた2023年2月から、協力してくれそうな社員に声掛けをして、関係部署の上長の許可を得たうえで、7月には放送が全く決まっていないにもかかわらずプロトタイプを制作しました。「この番組の良さは企画書という紙面上だけでは伝わらない。企画書だけで通らなかったら一生後悔するかもしれない」と行動を起こしました。

通常業務も抱えながらだったので、あらためて振り返ると無茶なことをしているなと思いますが、その時は「このアイデアをどうにか形にしたい」という熱量だけで走り続けていました。その甲斐あってか、レギュラー化を見据えた特番の放送の許可が下り、2023年の年末に1時間の特番として放送することになりました。

ラジオでは放送を聞きながら番組ハッシュタグをつけてXにポストして、リスナーやパーソナリティが話題を共有しながら聞くというスタイルが定着しています。この番組にもその形を取り入れました。特番では番組ハッシュタグ「#ラテ神」が、年末の深夜にもかかわらずXの沖縄トレンド1位を獲得しました。さらに県外リスナーのためにYouTubeで見逃し配信も行いました。放送でも配信でも良い反響をいただいた結果、念願だったレギュラー化が決定し、今年の4月から放送しています。

うれしいことの連続

"ラテ兼営局の良さを生かしたコンテンツ"を目指して作った番組で、放送文化基金賞や新聞やウェブ記事の取材など、たくさんの反響が生まれました。それと同時に番組を作ってよかったなと思えることもたくさん生まれました。ひとつは「こういう番組を作ってくれてありがとう」「1週間のうちの楽しみが増えました」「この番組を見るためにテレビ買いました」など視聴者・リスナーからの声です。

もうひとつは、収録現場での出演者の楽しそうな様子です。自分たちが日頃やっている番組を神回として取り上げるということもあってか、ラジオスタッフもパーソナリティもとにかく楽しい時間が過ぎていくのです。これが仕事で良いのかな? と思えるくらい楽しいことばかりで、あるパーソナリティが放送後に「久しぶりに放送前にドキドキしている、こんなに放送が待ち遠しい感じは子どものころ以来だ」と話してくれたことが、本当にうれしかったのを覚えています。

そして、最もうれしかったことは、まったくスポンサーの目途が立っていなかった番組に現在2社もついていることです。スポンサーがいなければどんなに人気があっても番組は続けることができません。このままスポンサーが増え続ければ、番組が続けられるかもしれないと思っています。

番組は現在、沖縄ローカルの地上波放送のほか、TVerでも配信中です。またYouTubeでも年末特番を見ることができます。気になった方はご覧ください。

最後になりますが、番組からスタート4カ月ながら8月24日に番組イベント「ラジオの神回イベントだけで語る」を行いました。

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さまざまな事情により地上波で流せない神回や、イベントだけのオリジナルコンテンツを用意し、有観客&配信という形式で実施しました。入場チケットは完売、会場で販売したグッズも予想以上の売れ行き、配信チケットも想定の2倍以上という結果となり、お客さんからも「もう一度やってほしい」「次回は会場に行きたい」「もう一度見逃し配信を見直す」などたくさんのうれしいコメントもいただき大盛況で終えることができました。このイベントの見逃し配信は無期限ですので気になる方は購入してみてください。

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<イベントの模様>

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