まず、確率の話から。宝くじの一等に当選する確率、ゴルフのホールインワンの確率、どれぐらいかみなさんはご存じでしょうか。
諸説ありますが、年末ジャンボ宝くじで一等が当たる確率は、およそ2,000万分の1、ホールインワンの確率はプロ・アマ問わず、3,500分の1だそうです。ホールインワンは、たまに達成した人の話を聞くので「まぁまぁ、ありそう」と身近に思い、宝くじは「まず無理だ」と思いますよね。では、確率3万分の1ならどうでしょうか。
今回の受賞CMは、「確率3万分の1」がキーになっています。コピーを書いたのは、明治薬科大学4年生(昨年制作時)の岩﨑良太さん。新薬開発の成功率が、およそ3万分の1であることから、同じく3万分の1という低い確率でしか生まれない「三毛猫のオス」を登場させて、それでも「ゼロではない」と言い切りました。
確率3万分の1であれば、まず実現しないだろう......と諦めてしまう大人たちを尻目に、軽々と「ゼロじゃないじゃん!」と言い切る。若い目線の清々しさ!また、この確率の喩(たと)えに「三毛猫の遺伝子」を用いた科学的なポイントにも、"薬学"という理系の専門大学の「らしさ」を感じます。
このCMは、「JFNラジオCMコンテスト2021~ラジオに乗せて、学校アピール」応募作品です。このコンテストは、TOKYO FMをキー局とする全国のFM局、ジャパンエフエムネットワーク(JFN)が主体となって、2012年から毎年開催しているもので、今年で11年目を迎えました。全国の学生が、自身の学校をアピールするコピーを競うコンテストで、応募総数3,023件の中から厳選して制作した1本が、この明治薬科大学の「三毛猫」篇です。昨年の「JFNラジオCMコンテスト」でも見事、最優秀賞に輝き、このCMはフルネットで1カ月間オンエアされました。
CM制作は21年の6月中旬で、ちょうど新型コロナの1回目ワクチン接種が広く行われ始めた時期でした。コロナ禍で、新薬やワクチンに対する期待が高まった昨年、一昨年に比べ、時間が経過するにつれ、お薬のあることを当たり前のように感じてしまいます。新薬の研究開発からテスト、承認、万人が使用できるまでの道程に思いをはせると、本当に頭の下がる思いです。新薬開発に挑む学生や研究者のみなさんへ感謝の気持ちを忘れないようにしたい......。このCMを聴いた方に、そう感じていただければ幸いです。
最後に、最優秀という栄誉ある賞を頂きまして、まことにありがとうございました。"科学の視点"と"若い志"で、見事なコピーを書いた岩﨑さんに、心から「おめでとう」のひとことを伝えたい。そして、私たちプロの大人たちも、学生に負けないコピーを書かねば!と気を引き締めて、また明日から日々のCM制作に向き合ってまいります。