【最優秀受賞のことば】 朝日放送ラジオ 中央軒 企業CM/「あますことなく」 篇 (2024年民放連賞ラジオCM第1種) 

野本 友恵
【最優秀受賞のことば】 朝日放送ラジオ 中央軒 企業CM/「あますことなく」 篇 (2024年民放連賞ラジオCM第1種) 

ラジオCMでは20CMが主流となっています。音声のみの20秒という秒数の中で、企業メッセージ・商品の魅力などを聴く人に印象づけることは難しく、あまり推奨されてはいない企業名や商品名の連呼を希望する広告主は今でも少なくありません。ただ連呼しても意外にも聴く人の耳には残りにくく、時には不快にさえ感じるCMにもなりかねません。連呼するにしてもアイデアがかなり重要となります。                         

このCMのコピーを書いてくださった関東在住の森田一成さんは、帰阪された時は必ずと言っていいほど中央軒に行くそうです。残念ながら現在関東には中央軒のお店がありません。森田さんが大阪で仕事をされていた頃は近くの中央軒にほぼ毎日通われていたというぐらい昔からの中央軒ファンです。そして昔も今もお店に行かれた時には毎回、大人気メニューの「長崎ちゃんぽん」を食べるか「長崎皿うどん」を食べるかで迷うそうです。かなり迷います。お店に入る前に決めていたとしても注文するその瞬間まで迷います。

実は私もまったく同じで、もともと「長崎皿うどん」派なのに、お店に行くと「長崎皿うどん」か「長崎ちゃんぽん」のどちらを食べるかで迷ってしまいます。両方食べたいけど両方注文すると、どちらもたっぷりの量があるので一人では食べきることができない、残ってしまう、もったいない、悔しいという思いに、いつもなります。だから毎回どちらを食べるかをギリギリまで迷います。

そこで、せめてラジオCMだけでも「長崎ちゃんぽん」と「長崎皿うどん」の両方を楽しめるものを表現できないか? 作ることができないか? というのが今回のCMの企画のもととなっています。左右のスピーカーを使って、「長崎ちゃんぽん」と「長崎皿うどん」のそれぞれの魅力を同時に紹介していくことにしました。

左のスピーカーからは「長崎ちゃんぽん」の魅力を、右のスピーカーからは「長崎皿うどん」の魅力を伝えます。煩雑にならないように左右の声のバランスにはかなりこだわりました。左右の出演者の声をまったく違う声質にしてしまうと、聴く人が違和感を感じかえって聴き取りにくい。また似すぎていてもそれぞれの言葉が重なってしまうので聴き取りにくい。左右をそれぞれ聴き分けられる声でありながら全体で聴くとまとまりがあるように仕上げました。聴いている人が左・右と聴き入ったあとに、最後に両方のスピーカーから「中央から中央軒」と絶妙なコピーを全員で言うことでお店の名前を印象付けることができました!

どのCMもそうですが出演者との信頼関係が作品のクオリティに大きくつながっていると思います。今回の作品でも、左右どちらの出演者も、ナレーションでCM全体を引き立ててくださった出演者も、皆さん企画の意図と自分の役割をしっかりと理解し全体のバランスを考えながら20秒を構成してくださいました。

20CMはまだまだ可能性を秘めており、面白くできる!」と私も森田さんも信じております! 一番数多くラジオで放送される20CMだからこそ、もっともっと魅力的で聴く人の心に残るものにしたい! だから新しいことに挑戦していきたい! という想いがこめられたCMです。このCMが高い評価をいただけたことで、中央軒の美味しい「長崎ちゃんぽん」と「長崎皿うどん」がこれからもたくさんの人に食べていただけることを願っております! ありがとうございました!


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