物語の内容に合わせ、笑ったり驚いたり、真剣に朗読に聞き入る子どもたちが見せる素直な反応は、普段テレビカメラに向かって話すことが中心の私たちアナウンサーにとって、うれしくもあり緊張感もある貴重な機会です。10年の継続は、子どもたちに読書の楽しさを届けただけでなく、研修やまとまった練習の時間を確保できないローカル局のアナウンサーにとって大きな学びの場でもありました。
各地を訪問する中で人と出会い、歴史や文化に触れ、県外出身のアナウンサーが"地域のアナウンサー"になっていく。この地域とのある種の循環が、私たちの朗読を受賞に値する活動に発展させてくれたと信じています。特に7年前に「ESD(持続可能な開発のための教育)」というユネスコが掲げる教育理念の実践団体に指定されてからは、朗読を通じ「いかに地域の課題に向き合うか」との思いが各アナウンサーの中に芽生え、西日本豪雨やコロナ禍のさなかでも、子どもたちに読書環境を届けようとさまざまなアイデアが生まれました。
今、朗読活動は視覚障害者に向けた生活情報紙や絵本の音訳など幅を広げ、「誰一人情報から取り残されない社会」の実現を目指しています。情報のバリアフリー化への意識は、災害時などに今まで以上の丁寧なアナウンスとなって必ず地域に貢献できると思います。地域に欠かせないアナウンサーであり続けるために――私たちはこれからも地域に寄り添い、大切な"ことば"を紡いでいきます。