【最優秀受賞のことば】BS朝日 バトンタッチ SDGsはじめてます #142「青鳥特別支援学校 夏の挑戦」(2024年民放連賞青少年向け番組)

茂木 あや香
【最優秀受賞のことば】BS朝日 バトンタッチ SDGsはじめてます #142「青鳥特別支援学校 夏の挑戦」(2024年民放連賞青少年向け番組)

『バトンタッチ SDGsはじめてます』は2020年4月に放送を開始し、SDGsや社会課題に取り組む人に密着し、気持ちの「バトン」をつなげていくことをコンセプトとしたレギュラー・ドキュメンタリー番組です。これまで約200人のSDGsに取り組む方々を取材してきました。

「SDGs」という言葉の認知度は上がりましたが、どこかジブンゴトではなく、何をすればいいか分からない。「いかにジブンゴトとして伝えるか」。これまで番組は、その点を試行錯誤しながら、向き合ってきました。そんな中、「青少年向け番組」最優秀を受賞したことは、スタッフ一同大きな励みになりました。東京都立青鳥特別支援学校ベースボール部の久保田浩司監督や選手ご家族の皆さんをはじめ、連合チームを組んだ松蔭大学付属松蔭高等学校と東京都立深沢高等学校の野球部の皆さん、これまで番組に携わってくださったすべての方に深く感謝申しあげます。

2023年5月、知的障がいのある生徒が通学する東京都立青鳥特別支援学校のベースボール部が、東京都高等学校野球連盟から初めて加盟を認められました。これまで主に安全面から知的障がいのある生徒が硬式野球を行うことへの反対は根強く、ほとんどの生徒がプレーをする機会すら与えられていない状況でした。

取材チームが久保田監督と初めてお会いした日は、加盟が認められた直後。単独でのチーム形成には人数が足りなかったため、連合チームの相手校を探すべく監督が動き始めた時です。そんな大事なタイミングから取材できたことが、賞をいただけたご縁だったのかな、と思います。

取材を通して見えたのは、「難しい」「危ない」という大人の思い込みを打ち破る「野球ができる喜び」に溢ふれ、いきいきとプレーをする選手たち。その周りには「粘り強さ」をもって指導される久保田監督とコーチたち。連合チームの選手たちも、彼らに触発され、それぞれの野球への気持ちの原点を思い出していきました。

野球は、走攻守のポジションごとに細かな動きや瞬時の判断などを必要とするスポーツです。これまで多くのスポーツ番組を担当してきたディレクターは、誰よりもその難しさが分かるがゆえ、番組内でもその点を丁寧に説明しました。西東京大会当日、選手たちのご家族は、試合の結果うんぬんではなく、最後までやりきったことに感動していました。

放送後、久保田監督から「これからも練習を重ね、単独チームになって初勝利を目指します」と連絡をいただきました。その言葉どおり、2024年に東京都立青鳥特別支援学校ベースボール部は、単独チームでの出場をかなえました。惜しくも初勝利はなりませんでしたが、まだまだ挑戦は続きます。

障がいがあろうがなかろうが、チャンスは平等にあるべきだし、そういう世の中になってほしい。「違いを知る。共に生きる。」こういった取り組みを伝えるメディアの「バトン」の輪が広がり、多様性のある社会実現の一助となれば、と強く願います。


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