「全国制作者フォーラム2026」開く "参加したくなる"テレビを目指して

編集広報部
「全国制作者フォーラム2026」開く "参加したくなる"テレビを目指して

放送文化基金主催の「全国制作者フォーラム2026」が2026年2月14日に東京都内で開かれた。2025年11月~12月に3地区(北日本愛知・岐阜・三重九州・沖縄)で行われた2025年度の各フォーラムを締めくくるもの(いずれのリンクも外部サイトに遷移します)。若手制作者やメディア関係者ら約100人が参加。各地区で優秀作に選ばれたミニ番組の上映と講評、ゲストを交えたトークセッションを通じて作り手たちがジャンルの壁を超えてテレビの未来を考えた。

トークセッションのテーマは「リブート!テレビデモクラシー~参加したくなるテレビの作り方~」。若者のテレビ離れや配信サービスの台頭で「テレビの力が弱まっているのではないか」といった声を受け、「もう一度テレビに振り向いてもらうために、みんなが参加できるような仕掛けを考えよう」という趣旨だ。バラエティ、情報、ドキュメンタリー、配信向けコンテンツの各ジャンルの第一線で活躍するクリエイターがそれぞれの仕事を紹介しながら、映像づくりの原点を問い直すとともに、テレビへの信頼を取り戻すための方策を話し合った。

口火を切ったのはフジテレビジョンの『新しいカギ』や『Aぇ!groupのQ&Aぇ!』の総合演出を務める田中良樹さん(スタジオ戦略本部第3スタジオ ディレクター)。『新しいカギ』がスタート当初の芸人によるコント中心のコンセプトから徐々に現在の視聴者参加型企画へとシフトしてきた経緯をたどりながら、「キッズやティーンに徹底的に照準を定めている」との現在のスタンスを紹介。ドキュメント性のある笑いを取り込み、若い視聴者が「テレビは僕たちのほうを見てくれているんだ」と思ってもらえるような仕掛けを意識していると話した。また、それに応えるためには活きのいい有能な若手スタッフをできるだけ早くディレクターに登用し、SNSや動画配信の分野に流出してしまわないような体制づくりも急務との考えを述べた。

NHKで朝の生活情報生ワイド『あさイチ』をプロデュースする木村友紀さん(コンテンツ制作局第2制作センター チーフ・プロデューサー)は、特集の企画で視聴者などへのアンケートやリサーチを徹底して行い、番組内でもメールやFAXなどを活用して双方向性を確保することが不可欠との考えを披露。特集として取り上げる機会の多い「節約術」企画に対して視聴者からは「節約を前提にするのではなく、節約しなくても生活できるのが理想。そうせざるを得ない社会の矛盾にも切り込むべきではないか」といった声も多く寄せられたことから、こうした声も番組でしっかり伝え、次の企画に反映していきたいと述べた。

ドキュメンタリー『能登デモクラシー』で地域の問題に鋭く切り込んだ石川テレビ放送の五百旗頭幸男さん(ドキュメンタリー制作部部長〔記者・ディレクター〕)は、権力批判的メッセージを前面に出した同作品のテレビ版から、その後の穴水町長や町議会の変化も交えて映画版では民主主義の再起動に向けて希望のある終わり方にしたかったと明かした(関連記事)。「諸外国に比べ日本のドキュメンタリーはガラパゴス化しているのではないか」との見方も示し、定型のフォーマットに落とし込んで安心するのではなく、「視聴者をもっと信じて、行間を読んでもらえるような、深みのある作品をつくっていきたい」と語った。

Netflixで『地面師たち』や『極悪女王』などのドラマを手掛けた髙橋信一さん(コンテンツ部門ディレクター)は「加入者の"視聴したい"という意欲と熱意に耐えうるコンテンツをどう作るかが勝負」とし、企画や脚本づくりの段階から全体の世界観を「バイブル」として詳細に設計し、ドラマの場合は全話一括配信して、まとめて見て、没入してもらえるような仕掛けを心がけていることを紹介。今後は感情を揺さぶられるようなドキュメンタリーの分野にもアプローチしていきたいとの意欲を示した。

最後にコーディネーターの丹羽美之・東京大学教授が「Netflixが入場料を払って楽しむテーマパークだとしたら、無料の地上波テレビは誰もが集える公園のような存在。長い歴史で培った報道、情報、エンターテインメントまでカバーする総合力で、テレビに愛着を持ってもらえるような全方向の努力を重ねていけば、オールドメディア批判などはかわすことができる」と締めくくった。

心を動かす数分間の物語~ミニ番組の優秀作を上映

恒例となったミニ番組の上映会は、各地区のフォーラムで優秀に選ばれた3本ずつ計9作品を上映した。主に夕方ニュースで放送された5~15分程度の多彩な特集やリポートだ。戦後80年の節目にふさわしい、地元で埋もれていた戦時中の証言や史実に材を得たもの、障害のある人たちに向き合うもの、震災の記憶や防災への教訓を継承しようとする調査報道など多彩な番組が並んだ。上映後は前述のトークセッションのゲストが制作者自身との質疑も交えて各番組を講評し、各ゲストがお気に入りの1本を選定し、懇親会で次の4作品を表彰した。

🎊田中賞:中京テレビ放送・鈴木桃寧さん=キャッチ!『旭丘高校天文部の挑戦』
🎊木村賞:鹿児島テレビ放送・小田夏好さん=ナマ・イキVOICE『おばあちゃん、戦争のはなしをきかせてください』
🎊五百旗頭賞:NHK名古屋放送局・飯嶋風子さん=まるっと!「"外国籍"消防団員の壁~愛知 西尾の模索~」
🎊丹羽賞:テレビユー山形・土川怜音さん=Nスタやまがた『東日本大震災から14年~あの日を境に変わった女性~』

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<上段左から田中さん、鈴木さん、小田さん、木村さん、
下段は五百旗頭さん、飯嶋さん、丹羽さん、土川さん>

このほか、トークセッションに登壇したNetflixの髙橋信一さんによる講演「Netflixのヒットコンテンツ制作の舞台裏とクリエイティブ・ビジョン」が放送文化基金の梅岡宏専務理事を聞き手に行われた(詳しくはこちら =外部サイトに遷移します)。全体の司会は長崎文化放送の下田朋枝アナウンサーが務めた。

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