北海道放送(HBC)、札幌テレビ放送、北海道テレビ放送、北海道文化放送とNHKは5月1日に「日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震時等の航空取材の協業(北海道モデル)に関する覚書」を締結した。北海道沿岸で大津波警報が発表された際に、5局はヘリコプターの運用を分担し、映像・音声を共有する(冒頭写真=北海道の民放4局とNHKが所有するヘリコプター5機)。日本海溝・千島海溝周辺の巨大地震など大規模災害発生時に、ヘリが撮影した道内各地の被害の状況を速やかに放送、配信することで、迅速な避難につなげて人命救助と財産保持に資するための取り組みだ。放送局によるヘリ取材の協力は、中京地区の「名古屋モデル」、福岡地区の「九州四国モデル」に次いで国内で3件目となる。
先行する「名古屋モデル」「九州四国モデル」は、生中継の映像を共有する枠組みだ。一方で北海道は面積が広く、民放4局はヘリが撮影した映像を地上で受信する設備の数が少ないことから、すべての地域からの生中継ができない。このため「北海道モデル」は生中継だけではなく、収録した映像も共有する。映像は各局および系列局で報道目的に限り使用できる。
5局のヘリは準備が整った順にフライトする。取材エリアは1番機から順に①太平洋側東部(釧路・根室管内沿岸)、②太平洋側西部(苫小牧・日高管内沿岸)、③太平洋側西部(室蘭・噴火湾・道南沿岸)、④太平洋側東部(十勝管内沿岸)を担当する。⑤5番機は遊軍として実際に被害が発生している場所をフライトする。
<飛び立った順に取材エリアを分担する>
「北海道モデル」初年度の幹事社を務めるHBCの磯田雄大・報道部長によると、ヘリの機体価格急騰により、1局単独での機体更新が難しくなっていることから、2023年9月にヘリを持つ民放4局で「共同運航」の勉強会を開始。北海道よりも先に協議を始めていた在福民放4局に、NHKも加わったことから、同勉強会もNHKに参加を打診し、2024年8月から本格的な議論を行い実現に至った。「住民の生命と財産を守るという共通の目的があるため、話し合いはスムーズに進んだ」と磯田報道部長。「北海道は、日本海溝・千島海溝周辺で巨大地震の発生が予想されており、垣根を超えて協力する必要性が高まっている。各局との連携を強化し、有益な防災報道・減災報道を住民に届けることを目指す」と意気込む。
今後5局は、定期的に共同で訓練を行い、災害発生直後の混乱した状況でも協力体制がとれるよう連携をいっそう強化していく。