米最大のケーブル会社誕生へ CharterとCoxが統合で合意 

編集広報部
米最大のケーブル会社誕生へ CharterとCoxが統合で合意 

米国の3大ケーブル会社のうち、2位のチャーター・コミュニケーションズ(Charter)と3位のコックス・コミュニケーションズ(Cox)が5月16日、事業統合することに合意したと発表した(冒頭画像はCharterのプレスリリースから)。Charterが345億㌦規模(約4兆9,000億円)でCoxを買収するかたちをとるが、両社は「買収」ではなく双方の役割分担が明確な「統合」だと強調。統合後の社名は「コックス・コミュニケーションズ」で、Charterのクリス・ウィンフリー社長兼CEOが引き続き新会社の指揮を執る。一般消費者向けのケーブルテレビやモバイルサービスはCharterの「スペクトラム」ブランドに一本化される。視聴可能世帯は全米で約7,000万と、現在トップのComcast(コムキャスト)の約6,400万を上回り全米最大規模のケーブル会社となる。統合完了は2026年半ばの予定。政府規制当局による認可が必要となる。

Cahrterは1993年創業。ブロードバンド、モバイル、固定電話、ケーブルテレビなどを手がける。Coxは1962年設立の非上場の同族経営企業で、親会社コックス・エンタープライズの中核事業を担う。CharterはCoxの法人向け光ファイバーやクラウド事業などを引き継ぎ、Coxは家庭向けケーブル事業をCharter傘下に移管する。コックス・エンタープライズは統合新会社の株式23%を保有し筆頭株主となる。

この統合は技術面で親和性が高いといわれている。Charter、Coxともにモバイル事業の提携先が通信大手のベライゾンで、Charterとコムキャストが共同展開する配信プラットフォーム「Xumo(ズーモ)」はCoxも採用しているからだ。さらにケーブルネットワークの技術面でも相互補完的に機能するとのこと。

業界を取り巻く構造変化も背景にはある。5Gなど「固定無線アクセス(Fixed Wireless Access)」の普及で近年はケーブル各社の強みだったブロードバンド事業も安泰ではない。ケーブルテレビ契約からの離脱(コードカット)が加速し、加入者数の減少は進む。Charterは2025年第1四半期にインターネット契約が6万世帯減少し、ケーブルテレビ契約も18万1,000世帯減ったという。Coxも同様で、今回の統合は市場動向への戦略的対応とみる向きもある。

トランプ政権発足以来、ウォール街では規制緩和への期待で企業買収の活発化が予想されていた。実際には、連邦通信委員会(FCC)による多様性・公平性・包括性(DEI)プログラムに関する企業調査や関税政策などの影響で停滞しているといわれる。2社の統合はここ1年で最大規模だけに、規制当局の判断が注目される。一方でこれまで業界1位だったコムキャストがどう動くのかも今後の注目点だと米メディアは指摘している。

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