加速する米国のコードカット 2025年全米には世帯の72%との予測も

編集広報部

米国でケーブルテレビや衛星テレビの有料契約を解除して動画配信サービスなどにシフトする「コードカット」がますます加速している。信用調査会社のConvergence Researchが5月末に発表した最新の調査によると、2025年までにコードカット世帯の割合は72%になると予測。53%だった昨22年から今後数年で急激に進む見込みだ。ここでいう「コードカット世帯」のなかには、以前から有していた有料視聴契約を解約した世帯と、有料視聴契約を一度もしたことのない、いわゆる「コードネバー」世帯が含まれる。

「The Battle for the North American (US/Canada) Couch Potato: OTT and TV」 と題されたこの報告書には、「これまで主流だったテレビ視聴形態(MVPD=ケーブルや衛星経由で地上波放送を同時再送信するリニアの多チャンネル放送事業者/vMVPD=インターネット経由の配信によるテレビチャンネルのバンドルサービス)が、これからはニッチ(隙間市場)になっていく」と表現されている。リニアと配信の逆転速度が今後さらに加速していくということだ。

調査では、NetflixやHuluなどの配信先行組と、地上波・ケーブルテレビ局による後進OTTサービスの広告売上も分析している。先行組の米国内での22年売上は前年比26%増の496億ドルで、23年はさらに21%増える見込みだという。しかし25年には前年比13%増と成長がスローダウンすると予測。一方、地上波・ケーブルテレビ局のOTTサービスの広告売上は25年に23%増と成長が加速する。ただし、この陰には当然ながらリニア広告売上の減少という現実があり、22年のリニア広告売上は前年比6%減、23年は9%減、25年には13%減と漸減が予測されている。

報告書はさらに22年から28年の間に現在の有料テレビ契約者の70%が解約するとしている。この間、放送局のリニアライセンス収入(MVPDから支払われる再送信同意料収入)は60%減となり、逆にOTTの収入は2.5倍になるとの予測だ。このように、テレビ視聴のありようが大きく変化するこの時期に、アメリカで一人勝ちしているのがケーブルテレビとインターネットの両サービスを提供するプロバイダー各社だ。ケーブル契約が減っても、OTTの成長でインターネット需要は拡大の一途。過去10年をみても、一般世帯のコードカットは加速する一方だが、その分ブロードバンド契約収益は2倍以上になっている。

5月初旬には米調査会社Leichtman Research Group(LRG)も同様の調査結果を公表しており、23年第1四半期に全米のコードカット件数が過去最高になったと報告。全米テレビ市場の96%をカバーする有料テレビプロバイダー各社が失った契約者数は合計221万5,000人で、前年同期の185万人から大幅に増加している。しかも、従来の有料テレビサービスだけでなく、その配信版であるvMVPDのHulu Plus Live TVとSling TVも解約が加速しているという。

最新記事