米国最大手の衛星放送事業者DirecTVが9月末、ライバルのDishネットワークを買収することで合意したと発表した(冒頭画像はDirecTVサイトの告知)。規制当局の認可を経て、2025年後半の合併完了を見込む。契約者数はDirecTVが約1,100万人、Dishが約810万人。合計1,910万人(調査会社Moffett Nathanson調べ)と、ケーブル最大手コムキャストの1,320万人を超え、全米最大規模の有料テレビ事業者となる。しかし、配信時代に入って衛星放送は苦戦を強いられており、1社に集約されることで事業をどこまで回復させることができるかは不透明だ。
DirecTVはDishの親会社EcoStarからDishを名目1㌦で買収し、同時に約98億㌦の負債を引き受ける債務交換取引となる。Dishにとっては「救命ボートに乗ったようなもの」とニューヨーク・タイムズ紙は伝えている。多額の負債を抱え、11月の返済を目前に手持ちの現金は5億㌦というDishはこれで破産を免れた。EcoStarはその後も単体でDish以外の事業を続けていく。DirecTVの大株主であるAT&Tと投資ファンドのTPGの間でDirecTV株の取引を行うことも発表された。AT&Tが持つDirecTV株の過半数をTPGが76億㌦で買い取る(DirecTV傘下の配信テレビSling TVも含む)。
DirecTVとDishの2社は2002年に合併することで合意していたが、当時は米連邦通信委員会(FCC)と司法省が認可しなかった。それ以降も2社の合併はささやかれていたものの、この間に配信サービスの台頭と隆盛、コードカット(有料テレビサービスの解約)が急速に進み、衛星放送の独壇場だった僻地にも近年はインターネットが普及している。業界関係者からは「今回規制当局が反対する理由はないはずだ」との見方が強い。
当局の認可が降りなかった場合、両社は違約金もなく合併を中止することが可能だという。ただし、DirecTVとDishの合併の可否に関係なく、AT&TはDirecTV株を売却するとのことで、2022年にワーナーメディアをディスカバリーに売却したのに続き、AT&Tはテレビ事業から完全に撤退することになる。