FM802 ミュージックステーションならではの番組審議会【放送の自主・自律を守る-番組審議会の目線から⑥】

河原 敬子
FM802 ミュージックステーションならではの番組審議会【放送の自主・自律を守る-番組審議会の目線から⑥】

各放送局がそれぞれ設置している番組審議会。その役割や意義について連載企画を通じてお伝えしています(まとめページはこちら)。 第6回目は、ラジオ局の番組審議会についてFM802(FM COCOLO)番組審議会事務局の河原敬子さんに紹介いただきます。


FMラジオ放送のFM802とFM COCOLOは、大阪市北区に本社を置く株式会社FM802が1局2波体制で放送しています。

FM802は1989年に近畿地区で2番目の民放FMラジオ局として開局し、16~34歳をターゲットとしています。一方、FM COCOLOは1995年開局。2012年に事業譲渡により株式会社FM802による放送を開始し、FM802より上の世代も含めた層をターゲットとすることにより、2局の差別化を図っています。

両局ともに音楽番組を放送するミュージックステーションで、一部ネット番組はあるものの、ほぼ自社制作の番組を放送しています。

当社では、番組審議会を年10回開催しています。2局の番組を月替わりで交互に審議しており、両局ともに偏ることなくプログラム全体から審議対象番組を選定しています。

そのうえで、▽新番組を放送開始から数カ月で取り上げ、いただいたご意見を番組にフィードバック。1年以上経過した後に再度審議、▽両局とも音楽イベントや主催コンサートを多く行っており、委員のみなさんをご招待し、次回会合で審議、▽毎年3月に1年を通して番組・イベントを含めた全般について議題とする――ことなども行っています。

多様な番組審議会委員による発言

番組審議会の委員は6人で構成されています。ミュージックステーションということもあり、エンターテインメント系の方が中心で、6人のうち5人は、radikoの考案者である大学名誉教授、フードコラムニスト、華道家元、映画ライター、映像・出版事業社代表に務めていただいています。

番組審議会では、委員各自の専門分野に例えたご意見をいただくことも多くあります。例えば、FM802で若手ミュージシャンが隔週で担当している番組が議題となった際、フードコラムニストの委員から、「私とはだいぶ年齢差がありますので、番組を聴いた時は違和感があったのですが、聴いているうちにスッと入ってくるような不思議な感覚がありました。東京で江戸前の寿司を食べると、最初は酢がキツイと思うのですが、その後はスッと食べられる。それに似た印象でした」といった発言がありました。

また、1年任期で大学生1人にも委員をお務めいただいています。ラジオを聴く環境が、従来のラジオ受信機からインターネットを利用するradikoに変わってきている昨今、大学生委員の意見は、気づかされることが多くあり、各委員も興味を持って聞いています。特に、大学生はターゲット層から外れているFM COCOLOの番組『Whole Earth RADIO』の中で「詩人・最果タヒと作詞家・松本隆の対談」が興味深かった、という発言があり、サブスクで音楽を聴く世代にとって、楽曲の新旧という感覚はなくなってきているのではないかと感じさせられました。

同様の話は大学名誉教授の委員からもありました。それは、「学生たちに50年以上前に発売された指定のレコード3枚を聴くことを夏休みの課題にしたところ、感想で特に多かったのが、"言葉"についてで、『情景がすごく浮かぶ』『音数が少なくて間がある』『ゆったりとした気分になって、ノスタルジーを感じた』という意見や、『とても新鮮で50年以上前の曲とは思えない』との意見もあった。もしかすると、曲や詞、サウンドは、年齢に関係なく響く人には響くのかもしれない。年齢によって、ライフスタイルやはやっている曲を切らなくても良いという可能性もあるのではないかと思う」とのご意見でした。こうした若い世代に関するご意見は、番組制作にあたって、非常に参考になると感じています。

ミュージシャンとの関わりや想い・楽曲を大切に

ラジオならではの特性である"リスナーとの双方向性"を活かすため、両局とも生放送している番組が多く、ミュージックステーションとして、DJをはじめ番組スタッフが届けたい楽曲を選曲し、多くの曲をリスナーに届けることを意識して放送しています。

ミュージシャンとの関わりも大切にしており、FM802では、2組の若手ミュージシャンに週替わりで2時間番組を1年間担当いただいています。

担当ミュージシャンから「2時間、自分が良いと思う楽曲を世の中に発信できることは、本当にうれしい」という言葉をもらってスタート。彼ら自身、「自分は音楽に救われてきたので、同じような体験をしてもらえるような時間がつくれたら。選曲した楽曲をどういうふうに聴いてもらいたいか、どういうところに着目してもらいたいかをしっかり説明したうえで音楽をかけたい」という想いをもっています。ディレクターとも丁寧に話し合い、それぞれの曲をかける前にどういう話をしてどのタイミングで曲に入るかも細かく打ち合わせして番組に臨みます。いまでは番組を通じて築いた関係から、局主催のコンサート出演などにもつながっています。

いま、さまざまな情報にあふれ、不快に感じたり失礼に当たると感じたりする人も多くなっているように思います。そうした中で、ラジオ局として、番組を通じ、どのようにミュージシャンたちの想いや楽曲をきちんと伝えられるか。そこに私たちの命題があると思っています。番組審議会からの意見が、その一助になると考えています。


FM802(FM COCOLO)番組審議会事務局
河原 敬子(かわはら・けいこ)

1989年より契約社員等を経て、2007年にFM802正社員入社。802編成部・営業部デスクを経て、現職のCOCOLO編成部配属に伴い番組審議会事務局を担当。

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