さくらんぼテレビジョン「従来の枠組みにこだわらない番組審議会のあり方を模索」【放送の自主・自律を守る―番組審議会の目線から】④

柳澤 浩
さくらんぼテレビジョン「従来の枠組みにこだわらない番組審議会のあり方を模索」【放送の自主・自律を守る―番組審議会の目線から】④

各放送局がそれぞれ設置している番組審議会。その役割や意義について連載企画を通じてお伝えしています(まとめページはこちら)。 第4回目は番組審議会の様子を、さくらんぼテレビジョン番組審議会事務局長の柳澤浩さんに紹介いただきます。


私たちさくらんぼテレビジョン(以下さくらんぼテレビ)は山形市に本社を置く、山形県内を放送対象地域とする地上波テレビ局です。当社の番組審議会は現在7人の委員で構成しており、原則として年10回、対面での出席を基本に開催しています。

山形国際ドキュメンタリー映画祭の理事長に番組審議会の委員長を務めていただき、副委員長には、地域とマーケットの活性化を目指して地元で企画会社を経営している代表の方に就任いただいています。長年、大学の映像科で教鞭をとっていた委員長は言わずもがなですが、副委員長も放送業界に長く籍を置いていた方で、映像表現や番組制作について豊富な経験に基づく高い見識をお持ちです。このお二人を中心に、地元のビジネス、教育、スポーツ、農業、観光といったそれぞれの分野で要職を務める方々が委員として参加し、毎回活発な議論を重ねています。

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「自社番組の合評」以外のテーマも

番組審議会の運営にあたり心がけているのは「機械的に自社制作番組について意見を求めるだけの会にならないこと」です。もちろん、審議会に課せられた最も重要な使命は「放送番組の適正化」であり、そのためには自社で制作した番組を委員に視聴していただき、そのうえで私たち放送事業者が自主・自律的に改善を図るためのご意見をいただくことが肝要であることは言うまでもありません。ただ、一義的にその役割のみに囚われて、毎回ワンパターンになれば、「審議会の形骸化」につながりかねないと考えています。

形骸化しないための対応の一例として、当社ではタイミングが合えば、山形で取材・撮影を行って制作された他県の系列局のコンテンツを合評番組に選定しています。他局の制作者から説明を受け意見交換することで、これまでとは違った新鮮な議論が行われます。また、私たち自身も、地元では気がつかなかったり、見落としがちだったりする県外ならではの視点、他局の番組から感じられる「異なるイズム」、あるいは制作ノウハウなどを吸収して、自局の番組をさらに高める機会にしたいと考えています。最近では鳥取・島根を放送エリアとするTSKさんいん中央テレビ制作の「かまいたちの掟/遠征 in 山形編」を取り上げました。

ローカル局は、キー局・準キー局に比べて制作する番組のジャンルが限られ、また制作本数自体も多くありません。系列のローカル局間で情報交換しても「年間で何回か同じ番組を選定することがある」といった声をよく耳にします。その一例として上記のように、当社では「自社番組の合評」以外のテーマも織り交ぜていますが、これ以外にもさまざまな方法があると思います。そうした方法が、民放連の番組審議会検討部会などを通じ、系列を超えて広く共有されることが望ましいと考えます。

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視聴者の信頼のうえに成り立つ自主・自律

今回の連載のテーマは「放送の自主・自律を守る」です。昨今、「放送の自主・自律」を守ろうとするテレビ局の姿勢は、ややもすると「既得権益への固執」とか「オールドメディアの驕り」などと曲解されて世間に伝わりかねないと感じています。そのような状況を乗り越えるためにも、放送局には今一度「表現の自由を守る」という放送法の精神に立ち返って、これらの齟齬や誤解を解きほぐすための努力が求められていると思っています。

先日、委員長から「情報過多のこんな時代だからこそ、極論すれば『この局が言ってるんだから信用してみよう』とまで思わせてくれるテレビ局が出てきてほしい」との意見をいただきました。これこそ、視聴者の信頼のうえに成り立った放送の自主・自律の実現の理想的な姿ではないかと感じています。私たちさくらんぼテレビはローカル局としてそんな理想に向かって何ができるか、番組審議会からの情報発信やその機能の活用で新たにできることはないか、これからも知恵を絞りながら、従来の枠組みにこだわらない番組審議会のあり方を模索していきたいと思います。

以下に、さくらんぼテレビの番組審議会ウェブサイトのURLを掲載しています。なお、民放連では、各局の番組審議会のウェブサイトに容易にアクセスできるよう、「番組審議会ポータルサイト」を開設していますので、そちらもぜひご覧いただければと思います。

●さくらんぼテレビ「番組審議会ウェブサイト
●民放連「番組審議会ポータルサイト

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