中京テレビ放送「テレビ局における一般的な番組審議会運営と自社独自の取り組み」【放送の自主・自律を守る-番組審議会の目線から⑤】

元木 敬文
中京テレビ放送「テレビ局における一般的な番組審議会運営と自社独自の取り組み」【放送の自主・自律を守る-番組審議会の目線から⑤】

各放送局がそれぞれ設置している番組審議会。その役割や意義について連載企画を通じてお伝えしています(まとめページはこちら)。 第5回目は、テレビ局における一般的な番組審議会の運営と、自社の放送の自主・自律を守る取り組みを、中京テレビ放送・放送番組審議会事務局長の元木敬文さんに紹介いただきます。


今回は、テレビ局における番組審議会の一般的な運営の流れと、中京テレビ放送(以下、CTV)における独自の取り組みをお伝えします。

はじめに、CTVは、愛知・岐阜・三重の3県を放送エリアとする日本テレビネットワークのテレビ局です。同ネットワークの日本テレビと読売テレビが放送する全国ネット番組を基本タイムテーブルとしており、全体の約20%の番組を自社で制作しています。

次に、CTVの番組審議会では、現在8人の学識経験者に委員を委嘱しています。一方、局側は代表取締役をはじめ、番組編成や制作に携わる部局の担当役員および幹部職員を定例の参加メンバーとし、基本的に月に1度、年間11回(8月を除く)開催しています。

テレビ局における一般的な番組審議会の運営の流れを整理するとおおむね次のとおりです。

①合評番組の選定・番組審議委員への周知
・自社で審議対象の番組(合評番組)を選定する。
・委員に合評番組の番組名・放送日を周知したり、録画した番組を送付したりして、事前に視聴いただく。

②番組審議会の開催
・委員から合評番組に対する意見や感想を発言いただき、局側と意見交換を行う。合評番組の放送局側の担当者も出席し、質問に回答する。
・電話やメールによる視聴者意見などを報告し、審議の参考としていただく。
・開催場所は、放送局の会議室を基本としているが、リモート会議方式を併用する場合や、参加が困難な場合は書面提出もある。

③審議結果の社内周知
・合評番組の審議結果を社内の番組制作などの関連部局に周知する。

④「議事の概要」を公表
・結果を、「議事の概要」としてとりまとめ、自社のウェブサイトや番組などで公表し、視聴者にお伝えする。

放送法では、放送は言論媒体であることから、他から干渉を受けることなく、自分で自分を律する「自主・自律」を基本的な考え方としています。上記のとおり、各テレビ局とも、自主的に合評番組を選択し、番組審議会で審議いただき、自社の番組に生かす、という循環をしっかり回すことで自主・自律の堅持に務めています。

独自の取り組みを展開
委員の自由な意見も

CTVにおける独自の取り組み、特徴的な対応をご紹介します。

合評番組の選定について、CTVでは、自社制作番組の中からニュース・ドキュメンタリー・情報・バラエティ・ドラマなど偏りがでないよう配慮しているほか、評価の高かった番組や、視聴率の良かった番組を選ぶのではなく、さらに番組の質を上げていくために、厳しいご意見や、批判的な意見も出てくるような番組を選定するように心がけています。

また、年に一度、合評番組は設定せず、委員のみなさんに発言いただく機会を設け、自由にCTVの番組についてご意見をいただいています。昨年は、「ローカル局としての中京テレビに求めるもの~私の好きな番組とその理由~」として開催したところ、多くの委員が『ヒューマングルメンタリー オモウマい店』(CTV制作全国ネット放送中)を挙げました。全国各地の魅力的な店主の店を紹介するこの番組に対し、「ただの娯楽番組ではなく、店主のうそのない生きざまにまで迫り、ドキドキや笑いがいつしか尊敬に変わるドキュメンタリーだ」「人と人の心の触れ合いが大切にされていて、まさにヒューマンという点で秀でた番組だ」などの意見をいただきました。

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<オンラインも併用し議論する番組審議会のもよう>

さらに、「ローカル局に求めるもの」に関しては、「インバウンドが弱いこの東海地方の基幹局として、歴史的・文化的な魅力ある地方色を探して未来の観光資源の原石を発掘し、グローバルチャンネルとして世界に発信してほしい」などの要望もありました。一方で、「"ローカル局"という言葉は劣後的なイメージがあるので、"地域局"と言い換えて、地域社会の発展・活性化に向けて貢献していただきたい」「若い世代に出前授業や現場見学などを行い、メディアやマスコミに興味を持つ子どもたちを育ててほしい」といった意見もいただきました。

放送の自主・自律を守る多様な取り組み

番組審議会から離れますが、「自主・自律を堅持していく取り組み」として、CTVでは別途、社外モニター制度やコンテンツ危機管理委員会の設置、社内勉強会の実施にも注力しています。

社外モニター制度とは、現在10人の一般視聴者の方にモニターになっていただき、月に3~5本のCTV制作番組を視聴して、感想をリポートしてもらっているものです。今年度は、10~20代5人、30代以上5人のモニターの方に、率直な感想を書いていただき、このリポートを次の番組制作に生かしています。

コンテンツ危機管理委員会は、番組制作において社内共有すべき案件を局長クラスで話し合うもので、"ヒヤリハット"や、他局の事例なども議題に取り入れて検討し、その結果を社内で共有しています。社内勉強会にも力を入れていて、管理部門主催の全社勉強会だけでなく、制作や報道も個別の勉強会を随時開催して、広い視野で番組作りに取り組めるよう努力を重ねています。

以上のとおり、CTVでは、番組審議会をコアとして、さまざまな取り組みも複合することで、よりよい番組作りを目指したいと考えています。

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