スタンダード・ゼネラルとテグナの合併に暗雲 米NABがFCCを批判

編集広報部

スタンダード・ゼネラルによるテグナの買収に、暗雲が垂れ込めてきた。全米51のテレビ市場で64局を所有するテグナに対する投資会社スタンダード社による買収・合併は2022年2月に合意しており、当初は数カ月で完了すると見られていた。ところが延期に次ぐ延期で、今年2月末にはFCC(連邦通信委員会)がさらなる公聴会を開くことで買収の延期を決定し、事実上、合併は極めて困難になったとみられている。

FCCのこの決定を不当として、スタンダード社は3月末、連邦巡回区控訴裁判所に司法による再審査を訴え、それをバックアップする形でNAB(全米放送事業者連盟)も同控訴裁に意見書を提出。「決定はFCC委員ではなく職員によって下されたもので、彼らの職務権限を超えている。違法であり、ローカル放送局の未来を脅かし、同時に地域住民にも被害を及ぼす」と厳しく批判、両社の合併を支持すると明言した。しかし、スタンダード社の訴えは4月4日、同裁判所により却下された。

両社の合併は昨年のFCCの調査段階から賛成派の共和党議員と反対派の民主党委員で意見が割れ、FCCが業界や議会に意見を求めたところ、反対派のナンシー・ペロシ連邦下院議長(当時)ら大物が買収への懸念を表明。メディア業界の労組も買収阻止を求めてFCCに圧力をかけていた。

FCCは買収によって消費者への値上げとレイオフが加速する恐れがあると指摘。一方の支持派は、巨大IT企業を相手に既存の放送局が競争力を維持するには合併は必須という考え方だ。また、NABは2021年9月、FCCに放送局所有の近代化を求める意見書を提出しており、この中で女性や人種的マイノリティによる放送局所有の促進に触れている。スタンダード社のCEOは韓国系の女性であることから、この側面からも合併を進めるべきと当初から指摘されていた。

スタンダード社は2月、FCCを相手取り同控訴裁に「テグナのテレビ局ライセンスをスタンダード社に移行するよう司法がFCCに義務づけること」を求める訴訟も提起しており、4月14日以降に判断が下される見込みだ。NABのカーティス・ルジェット会長は「今回の対応は、現在のFCCシステムに重大な欠陥があることを露呈した。無料のローカル放送を頼る視聴者全てに甚大な影響を及ぼすことになる。もしこのFCCの決定がそのまま通るようなら、放送局によるローカルジャーナリズムはリスクを背負うことになる。法廷が迅速にこの案件に対処するよう求める」と述べている。

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