Netflixが2024〜26年の3年契約でNFL(ナショナル・フットボール・リーグ)のクリスマスゲームの中継権を獲得したことが発表されたのは5月半ば、アップフロント直前のことだ。今年12月25日の2試合と、25、26年はそれぞれ最低1試合をNetflixがグローバルで独占生配信する(冒頭写真はNetflixの公式サイトから)。米国では近年、スポーツ中継がテレビから配信へと移行しつつあり、当初は関心の薄かったNetflixまでもが小規模スポーツイベントのライブ配信に食指を伸ばしている。そして、ここにきてのNFL、しかもドル箱であるクリスマスゲームの中継権を獲得したとあって、「テレビ業界に激震」と米メディアは報じていた。
ところが6月末、Netflixの制作体制に問題があることが露呈した。中継権は獲得したものの、Netflixには十分な制作能力がなく、提携先探しに躍起だというのだ。Netflixがスポーツ中継に乗り出すのはAVOD(広告入りプラン)のさらなる契約者獲得のため。「スポーツ・エンターテインメント」と位置づけ、今年初めにはプロレスWWEの「Raw」の中継権を得ているが、制作はWWEが全て行うことになっている。
NFLのクリスマスゲームはNetflixにとって初のメジャースポーツ中継となる。ただし、スポーツ中継は各種目に応じた専門的な知識と実況のためのハイレベルな技術、なによりそれを支える人材が求められる。Netflixにはスポーツ部門に十分な準備があるとはいえず、すでにディズニーのESPN、NBCU、パラマウントグローバルのCBS スポーツなどNFL中継に実績のあるテレビ各局に制作提携の可能性を打診していると伝えられている。しかし、米メディア各社によると、ESPNは同じクリスマスに大学フットボール中継を行うことを理由に要請を却下。FOXとCBSスポーツも毎週全米各都市で行われるさまざまなスポーツ中継の制作に手一杯でNetflixを手助けする余裕はないという。
2022年にはAmazon Prime VideoがNFL「Thursday Night Football」の最初のシーズンを中継するにあたってNBCUの支援を受けた前例がある。しかし、今回のNetflixはそう簡単にはいかないだろうとNBCニュースは報じている。パラマウントやFOX、NBCなどとのNFL中継契約が切れる2029~30年シーズン以降、中継権を狙っているとされるNetflixにライバル局が協力するとは考えにくいからだ。ただし、NFLからテレビ局に圧力があったり、Netflixから巨額の制作料の提示がされた場合には実現するとの見方もある。
Netflixが今回のクリスマスゲームでNFLに支払う放送権料は1試合につき約7,500万㌦(約120億円)。これを本格的なスポーツ中継への弾みにしたいところだ。NFL側にも、グローバルレベルで若者層にリーチできるメリットがあるだけに、今後の去就が注目される。