米国でのアンテナ普及率 若者層の23%が利用 ローカル報道へのアクセスなど理由に

編集広報部

消費者動向・市場調査会社ホロウィッツ・リサーチ(本社ニューヨーク州)がこのほど、地上波テレビに関する調査結果「State of OTA 2022」を発表した。毎年行われている調査で、米国内での地上波(OTA=over the air)アンテナなどの普及・利用状況を追跡。コードカットが急速に進む時代に、ライブのリニアテレビ放送を視聴するツールとして、デジタルアンテナがどのような位置にいるかを分析している。次世代テレビ放送規格(ATSC 3.0)の普及が進む中で、アンテナ利用が再認識されつつある今、興味深い調査と受けとめられている。

調査の結果、デジタルアンテナの所有率は全米で18%。ほぼ10人に2人で、前年比では変わらず、新型コロナウイルスのまん延で所有者が急増した時期よりも減少傾向にあった。しかし年齢別に見た場合、若者層では前年の14%から今年は23%と急増していることも確認された。50歳以上の所有率は15%だった。人種別ではラテン系が25%とトップで、アジア系が19%、白人・黒人がいずれも18%と続く。

アンテナ所有者には、ケーブルや衛星テレビ契約(MVPD)を継続している人と、コードカットした人の両方がいる。「アンテナを世帯内のメインのテレビに繋げている」と答えたのは、これらデジタルアンテナ所有者全体の67%で、コードカットしたデジタルアンテナ所有者になるとそれが78%に増える。

調査では、これらアンテナ所有者らは、ただ所有しているのではなく、実際にアンテナを利用していることも示された。所有者全体では、「4時間のテレビ視聴のうち1時間(26%)はアンテナ経由」で、コードカットしたアンテナ所有者になるとそれが「10時間のうち4時間(42%)はアンテナ経由」と、アンテナ利用時間が増加する。

デジタルアンテナを持つ最大の理由として挙げられたのは、「ローカルテレビ局のチャンネルをライブで見るため」。次いで「ローカルニュースを見るため」と続く。特記すべきは、ホロウィッツ・リサーチが"ハイパー・ローカルニュース"と呼ぶ、「自分が在住する市町村ニュースへのアクセス」をアンテナ所有の理由に挙げた人が58%いたこと。全米ニュースや地域ニュース(市町村より広いエリアのニュース)とほぼ同等の需要を示した。

これらデジタルアンテナ所有者全体の62%が「満足している」と答えているものの、アンテナ経由で見られるチャンネル数が限られていることなどが不満に挙げられた。

業界によるアンテナの普及努力も十分とは言えないと、ホロウィッツ・リサーチは指摘している。アンテナを持っていない人の54%が「アンテナについてよく知らない」と答えている。これらの人にアンテナの利点とベネフィットを説明したところ、13%が「将来アンテナを買おうと思う」と答えたという。報告書は、「ローカルニュースへの需要は非常に高い。デジタルアンテナならば、それを無料で視聴できる。ところが、多くの人はアンテナがテレビ視聴方法の一つであることすら知らない。アンテナを今以上に普及させるためには消費者教育が必須だ。業界を挙げてアンテナへの認識を高める努力をすべきだ」などと指摘している。

この調査は、自宅に最低1台のテレビを所有する全米の18歳以上、または家庭内で決定権を有する人1,600人を対象に2022年を通じて行われ、そのサンプルデータが全米のテレビ視聴状況を反映していることを検証したうえで、今年11月にリリースされた。

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