IT大手に押され、倒産や経営難に直面する米国の地方紙やローカル放送局を連邦レベルで擁護しようという新たな法案が複数提案されている。7月末に連邦下院に提出されたのが、超党派による法案「Community News and Small Business Support Act」だ。2021年に廃案となった法案「Local Journalism Sustainability Act」を改訂したもので、当初のジャーナリズム擁護から焦点を小規模企業やローカルニュース/コミュニティ支援に移している。
同法案の提出を報じたニーマン・ラボ(Nieman Journalism Lab/ジャーナリズム研究を手がけるハーバード大学内ニーマン財団の一機関)は、「地元メディアを持たないコミュニティでは自治体内の汚職や行政府の浪費、増税がまかり通っている。地元報道が減れば減るほど、地域活動への住民参加率、選挙投票率も下がる。僻地の小規模コミュニティほど、こうしたローカルニュース砂漠化が顕著だ」と、昨今の米国各地でのローカルニュースの砂漠化を懸念していた。
同法案が提案するのは、小規模企業とローカルニュースメディアに対する5年にわたる2種類の税額控除だ。一つは「広告に対する税額控除(advertising tax credit)」。正社員50人以下の小規模企業に対して、ローカルメディアへの広告出稿助成金として初年度に5,000ドル、次年度以降は年に最高2,500ドルを支給するというもの。広告の出稿先は地元の新聞、デジタルニュースサイト、ラジオ、テレビなど全てのメディアが対象。ただし、この助成は部分的な払い戻しとして構成されており、5,000ドルの控除を全額受けるには、初年度に6,250ドルの広告費を捻出できることが条件で、そもそも税金を払うだけの収入がある企業が対象となる。これによって小規模のローカル企業はより大きな広告展開が可能になり、ローカルメディアもより多くの広告収益を得ることが可能になる。
もう一つは、「給与税額控除(payroll tax credit)」。例えば年収5万ドル以下の社員記者なら、初年度は給与額の半分、それ以降は30%が控除の対象となる。超党派のNPO「ローカルニュース再建連合」(Rebuild Local News Coalition)の試算では、法案期限(5年)内で社員記者1人につき延べ最高8万5,000ドルの控除を受けることが可能になるという。これによって、ローカルメディアは記者の雇用継続はもとより、新規採用も可能になると同連合は歓迎している。
ただし、同法案は下院・上院での審議を経て、大統領が署名して始めて法律化する。今後の展開が注目される。